【オンライン】35:喧嘩のコツ、ファーマ―という存在。




「さぁ~て、この勝負はガブさんの勝利ね」


 木漏れ日の揺れる日差しを眩しそうに、ただ、空を眺めているティフォは大の字になって盛大に寝っ転がっている。


「ふふ、ゲームでは負けないんだな」


 さっきの雰囲気とはガラリと変わり、明るく拳を突き上げて勝利のポーズを決めている。その様子に少しイラッとしている様子のティフォが居る。


 ちょっとそれが面白くって、思わずクスクスと笑ってしまう。


「すまないレディー達。貴方様にこういった所を見せるべきでは無かったのでしょうが、何しろ今まで逃げに逃げてきた奴なので、捕まえるのに必死だったのですよ」


 見たこともない決め顔をしながら、オレに向かって外国の紳士がする様なお辞儀をしてくれる、丁寧な綺麗なお辞儀だった。


『いや、何か理由があったんでしょう』


 一瞬、オレがチャットで返答すると首を傾げながらも、あまり気にしない様子で会話を続けてくれる。


「えぇ、まぁ……ご迷惑を掛け、それだけでなく助けて貰って居ながら私情に巻き込み申し訳ありませんでした。何かお手伝い出来れば遠慮なく言ってください」


 跪いて騎士がプロポーズでもするかの如く、オレに向かって手を差し出してくる。


「調子に乗るな」


 ティフォが起き上がって、ガブの頭を殴る。

 その拳を彼は嬉しそうに笑いながらまともに受けていた。


「いや~、コレですな~」


 待ってましたという感じで、笑いながら殴られた箇所を撫でて立ち上がる。


「想像していたよりも、ティフォ氏が今まで通りで良かったんだな」


 そう言われたティフォは顔を真っ赤にして。

 たじろぎながら赤に染まった顔を隠すようにガブに背を向ける。


「ったく、変わってないね」

「ははは、変わらぬよ。この性格だけは変わらないさ」


 ガブが空を見上げて、少し寂しそうに言うのがちょっと胸に痛かった。


「レディー……そちらの妖精はプレイヤーであろう? 初めて見るのだけど」

『えぇっと、この子は』

「二人でプレイ出来るっていうテスターも兼ねてプレイヤーだよ、ボクはシュネー」


 チラッとオレを見て、自己紹介をしろという念を送られてくる。


『オレはスノーです、よろしく』


 チャットでの会話の事を聞かずに何か頷きながら、ニコッと微笑んでくれる。


「改めて、トラン・ガウガブ。このティフォナスとはリア友なのですよ。以後、お見知りおきを、よろしくお願いしますなんだな」


 スッと自然に手を出されて思わず握手をしてしまう。


 シュネーにも丁重に指先を出して、よろしくと言いながら差し出し握手を交わす。




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