【オンライン】33:喧嘩とコツ、ファーマ―という存在。
「はぁ、ガブ……こんな所で会うなんてね」
「いやいや、むしろ個々でよかったんだな」
「は? それはどういう――」
「ここなら、遠慮なく喧嘩が出来るんだな」
オレの足が一瞬で竦んだ。
いま下手に動こうとすると、転んでしまうだろう。
シュネーもオレの肩に必死に捕まる様にして、ガブから隠れている。
「おっと、お嬢様達は関係ないから。え~っと、こうかな?」
フッと体に力が戻ってきた。
ただ、ティフォだけは動けない様子だった。
「自分よりレベルの低いモノの動きを鈍く出来る。ギアで言うと【威圧衝】って言う。スキルは【制圧】を持っていれば取得が可能になるんだな」
「ご丁寧にどうも、俺のも解いてくれる嬉しいんだけど」
「それは無理なんだな」
「なんで、かな?」
「じゅ、じゃない。ティフォナス殿は逃げるのが上手いから、オイラが逃げ足で唯一、負けを感じるほどに隠れちゃうのはダメなんだな」
純粋な逃げ足ならガブの方が早いと思う。
ただ、樹一はかくれんぼやら缶蹴りといった、身を隠してやり過ごす遊びに関しては、負けなしで、オレも勝ったことがない。
彼は異常なまでに、相手の意表を突くのが凄く上手い。
つまり此処は、隠れには事欠かない。
森というティフォに有利な場所だと、ガブは判断したのだろう。
だから逃げられる可能性を排除するために、威圧でティフォの足を止めている。
「はぁもう、別に逃げないから」
「ふむ、解く前にPVPを受けて貰うんだな」
「分かったよ」
ピーブイピーってなんだろう。
オレは本を呼び出して、ペラペラとさっきの言葉を探す。
シュネーもオレと一緒に探してくれる。
「あ、あった、コレじゃない?」
この説明書、オンラインゲームの専門用語もちゃんと載せてくれてるんだ。
オンラインゲーム上でプレイヤー同士が戦うこと、と載っている。オンラインのゲームにおける対人戦闘であり、コンピューターなどではなくプレイヤーキャラクターと一対一、又は、多数対多数で行われる戦闘である。
とりあえず、戦う事は分かった。
けど、どうしてガブとティフォが戦うのか、良く解らない。
オレがおろおろしているとケリアさんが横に来て肩を軽く叩いた。
「見守りましょうか?」
〈え? で、でも〉
「大丈夫じゃない? ゲームでの殴り合いだし」
〈もう、シュネーは何でそうお気楽なの?〉
「あら、アタシもシュネーちゃんに賛成よ」
少し驚きながら、オレはケリアさんを見た。
「うふふ、アナタには解らない事が多いでしょうけどね。男の子には殴り合ってでしか解決出来ない気持ちってモノがあるのよ」
〈あ~、うん〉
とりあえず頷いてしまう。
――すいません、ケリアさん。オレは元は男です。
ティフォとガブが何らや細かい話し合いをし終わると、お互いに距離をとった。
「互いに武器は無し。ただの殴り合いなんだな。けどレベル差があるからハンデとして、この戦いは互いの体力値や力などは基礎値で開始、能力も無し」
純粋に殴り合いをしようというバトルらしい。
「オーケー、負けても恨まないでよ」
「元より、コレはただオイラの我儘。これ一回だけなんだな」
二人とも拳を握って、戦闘の構えをする。
「じゃあ、ワタシが開始の合図をするわよ」
ケリアさんが二人の間に立って交互に二人の顔を見た。
「お願いします」
「よろしく、なんだな」
「では、互い戦。武器無し、能力無し、パラメーター初期値」
ケリアさんが高々に右手を上げて、一泊の間をおく。
「試合、開始!」
バッと勢いよく、ケリアさんが手を振り下ろして戦闘開始の合図をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます