第3話 初めての休日

 恭一郎さんと結婚してから初めての休日を迎えて、私は今彼と一緒にリビングでくつろいでいます。でも結婚生活ってこんなにゆったりとした物で良いのだろうかと。

「恭一郎さん。」

「どうした?」

「何かお手伝い出来る事はありませんか?」

「急に何を言い出すかと思えば手伝いを言い出すか。だが今日は結婚してからの初めての休日なんだ。ゆっくりするのも悪くないだろう?それに俺も疲れているからあまり動きたくない。」

「私は何か恭一郎さんの為にしたいんです!夫である恭一郎さんには勿論ゆっくりとしていて欲しいので、家事雑用は殆ど任せて貰えたらなと。」

「それではまるでお前が家政婦の様な扱いではないか。結衣は俺の妻なのだから俺と一緒に居れば良いし、なにも俺の為に尽くそうとしなくても良い。何かして欲しい事があれば俺の方から言うから、それまでは大人しくしていて欲しいのが俺の要望だ。」

「・・・分かりました。」

そうとは言っても私だって新妻なのだ。何か出来る事があればいいのにこのまま何も出来ないなんて。

「今から俺は書類整理や成績関連の仕事をしなければならないが、一緒に俺の部屋に行くか?」

「そうさせて頂けるなら。」


 恭一郎さんの部屋はシンプルな雰囲気を醸し出していて、何一つ無駄の無い綺麗なお部屋。プラモデルもしっかりと飾られていて、ほこりの無い綺麗なままを維持している。

「確か俺の部屋を見るのは俺が前に住んでたアパート以来か?あんまり変わっていないかもしれないが、大した変化も無いから退屈かもしれないな?」

「私が学生だった頃の家とは確かに違う部分がありますが、恭一郎さんらしいといえば納得できます。そういえばルンバなんていつ買ったんですか?私の記憶には無い物ですが・・・。」

「俺の弟が送って来てくれた物でな。俺が教師という職業をしているのを知っているから、あまり時間も取れないだろうという事で送ってくれた。こんな事しなくても俺には妻が居るというのに。」

「私だって家事は得意なので掃除くらいどうって事無いですから、ルンバ以上に綺麗に部屋を掃除します!」

「何だお前、ルンバに嫉妬したのか?」

「別にしてないですっ!」

「素直に嫉妬したといえばいい物を。だがお前のそういう所も悪くない。」

そういうと恭一郎さんは私を優しく抱きしめた。学園時代以来にこうして二人きりの時に抱きしめて貰えたので、正直懐かしい感覚になり私は思わず抱きしめ返した。

「こうして二人でまた抱きしめるのも悪くないな。そういえばまだ結衣が学生だった頃、お前はしょっちゅう俺に抱きしめられたり愛される度に顔を赤くしてたな?それは今も変わらないが俺はそういうお前も大好きだ。」

「急に何を言うかと思えばそんな事まで覚えていたんですね。でもそうでもしなかったらこうして結婚まで出来なかったですよね」

「言われてみればそうだな。」

そして恭一郎さんは私を一回離すと私をお姫様抱っこして寝室に連れて行った。


 まだお昼頃だというのに私を寝室に連れて行くという事は、恭一郎さんは私を求めているのだろうと私は察した。

「恭一郎さん、私の事が欲しいんですか?」

「それもそうなんだがお前熱あるだろ?さっきから体温が高いと思っていたんだ。体温計で熱測ってみろ。」

体温計で体温を測った結果、恭一郎さんの言う通り高熱だった。

「38度越えではないか。普段無理しすぎていたのではないか?暫くは俺が家事をするから、結衣はゆっくり休んでろ。」

「でもそれだと恭一郎さんの場合は藤城学園での生活もあるので、それに加えて家事もするのは結構大変ではありませんか?私だってこれくらいの熱で倒れている場合では無いので、少しは家事させてくれませんか?」

「俺は別に両立する事は俺自身にとっても苦ではないから気にする事は無い。それに俺の大事な妻にこれ以上具合が悪くなったら俺の面目が立たないからな。」

恭一郎さんは私に小さな小鼓を渡してくれた。中身は私の大好きなクマのぬいぐるみだった。

「これで少しは元気になるのではないかと思って買っておいたんだ。それに俺の妻になってくれた事に対する感謝の意味も込めて、そのクマのぬいぐるみの中に俺からの手紙が入っている。だがそれを見ていいのはお前の誕生日の時だけしか見てはならないから、それまでは絶対に中身を見ないでいて欲しい。」

「分かりました。」

私はそう言い残して熱の効果もあったのかいつの間にか眠ってしまった。恭一郎さんが暮れた大事なぬいぐるみを私は今後もずっと大事にして、それと同時に恭一郎さんをこれからも愛していこうと心に決めた。

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