二話〜絡み〜

 初めて優等生さんと連絡を携帯で取り合ってから三日が経った。けど、何かということも無かった。

 話はするけどさほど盛り上がることも無く……、十中八九話が盛り上がらないのが私の責任なのはお分かりの通り。未だに、話しかける勇気も湧かない。今は昼食時間で優等生さんと向き合っている状況なのだけど。

「優等生さん、話しって?」

 今日話したいことがある、と連絡できていた。

「いや、あの、明日土曜日じゃない?」

「そうですね」

「どこか一緒に行きたいなーって」

「一緒に……ですか。予定は空いてますけど、どこに行くんですか?」

「んー……」

「決めてないんですね」

「行きたいところある?」

「私ですか。えーと……」

 正直、行きたいところは沢山ある……けど、どれも友達が居ないが故の高き理想……。

「すみません、全く思いつかないです」

「まぁそっか、急に聞いてごめん。そうだなぁ、図書館とかどうかな」

「図書館、ですか。全く思いつきませんでした」

「私も本は好きだし、夏乃も読書好きだったよね?」

「好きですよ。でも、図書館で良いんですか?」

「好きな本とか、好きな言葉とかについて話し合えるじゃない?」

「図書館ではまともに話せないかもしれませんし。そもそも、本のことならいつでも話せる気がします」

「……確かに」

「んー……、どうせならその場でしかできないことをしたいですね」


「そうだ、ファッション店行こうよ」

「服、ですか」

「そうそう。普段着も見ておきたいし、他の服を着てるところも見ておきたいから」

「なるほど……」

 これって、優等生さんに合う服を前もって調べなければいけないんじゃ。黒髪、ロングヘア……。

「どうしたの夏乃。何その視線」

「え、別に、えっと。なんでもないです」

「意外とスケベ?」

「そういうのじゃないです! っていうか私女ですよ」

「そっち確認するんだ。こんなに可愛い男の子いたらびっくりするよ」

「優等生さんもそんなに見ないでくださいよ……」

「おお、照れてる」

 いつも通り、ふざけ気味の優等生さん。変わらないというかなんというか。

「とりあえず、ファッション店で決まりですよね?」

「決まりね。どこのお店に行こうか? あと、貯金は足りてる?」

「お店は帰ってから連絡取り合って決めたいですね。貯金はちまちま貯めてるので大丈夫だと思います」

「家に帰ってからね、わかった。お金の方も大丈夫そうでよかった」

「あ、もうそろそろ昼休み終わっちゃいますね」

「お弁当全然食べれなかった」

「ほんとですね」

「あれ、夏乃食べ終わってる」

「今日は量が少なかったんですよ。それに、喋りながらでしたし、食事の邪魔したようでごめんなさい」

「いいんだよー。楽しかったから」

「楽しい……?」

 新鮮な言葉だ。

「夏乃と話す時はいつも楽しんでるよ?」

「そうなんですか?」

「楽しくないとこんなに話してないでしょ」

「なら良いのですが……」

「私だって不安だよ? まだこうやって関わってから少ししか経ってないのに、ここまで仲良くなったの人生でも初めてだと思う」

「そ、そんなに」

「そうだよ! 言ったでしょ、お互い初めてって」

「そういえば、言ってました」

 でも、なんで優等生さん友達居ないんだろう。フレンドリーで話しやすくて友達多そうなのに。

「じゃあ、授業の準備しよっか」

「うん」



 まだ授業は基礎の基礎、まだ上の空でもついていける範囲なので授業中の十分くらいは空を眺めている。

 速く空を流れる雲。あの雲の宛はどこなのだろう。雨を降らせない雲はなんのためにあるのだろうとか、あの雲が綿飴ならいいのに、と高校生にもなって幼いことを考えてしまう。

「痛てっ」

 ほぼ毎日、一回は必ず攻撃される。毎授業に一回じゃないからまだ良いものの。

「昨日も言ったじゃないですか。この内容なら別にボケーッとしてて良いんです」

「違うの」

「じゃあなんで?」

「な、何となく?」

 何となく攻撃を仕掛けるっていうのもなかなかなものだけど。

「なんか、ごめん」

「大丈夫です」

 今日の優等生さんはなんだかそわそわしている。



 学校も軽い清掃も終わって、あとは下校。外に出ても優等生さんは見つからない。優等生さんはどこに居るんだろうか。

 ふと携帯の画面を見てみると、優等生さんから連絡が、用事できたから先に帰る……とのこと。

 徒歩で帰るって、こんなに足取り重かったっけ。まぁいいや。

 今日家に帰ったら何の本を読もうかな。

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