第07話 闇の底を見る。

「こんにちは」

不信感を与えないように、ごく自然に。


「……誰?」

……不信感を抱かせたようですね。

漆黒の瞳が、スーっと細まり、私の紫紺の瞳を射抜きます。


私は《イブの杖》から、微細な静電気を、闇の巫女の頭の周りに張り巡らせました。


悟られないように、慎重に。


「 私は、この街の住人です…あなたは?」

時間を稼ぎます。


もう少しです……。


「……」

闇の巫女は、無言で姿勢を低くしました。


…私は死ぬかも知れません。





……孤独……?

…底の方に…見付けました。



……佐賀さが青螺セイラ

…お姉さん……なるほど…。



「闇の巫女、佐賀さが伊万里イマリさん!待って下さい!私は怪しいものではありません」

仕掛けましょう。


「……」

いきなり名前を呼ばれれば、誰だって動けませんよね……イマリさん。


ゆっくり落とします。

「イマリさん……お姉様は元気ですか?」

「……お姉さん?」


「イマリさん……お姉さんは元気ですか?」

「……」


「セイラ、お姉さん……」

「……っ!」


「いえ……セイラお姉ちゃん」

「…………ちゃん」


脳神経に静電気を走らせ、イマリさんの想い出に介入しました。

イマリさんには今、セイラお姉さんが見えていることでしょう。


底にあった孤独という感情を引きずり出します。これで、洗脳出来そうです。


「はい、…セイラお姉ちゃんです」

「……おねぇ…ちゃん」


「おねぇちゃんは……元気ですか?」

「…………おねぇ…ちゃん」



「……行かないで…おねぇ…ちゃん」


「……こわい…みんな死んじゃう」


「……おねぇちゃん……たすけて」



イマリさんの瞳から涙がこぼれ出しました。

ここからが本番です。


「大丈夫よ…神様は、お姉さんに逢わせてくれます」

「……おねぇちゃん…」


「お父さんとお母さん、お姉さんが待っていますよ」

「……家…族…」


「あなたは孤独ではないわ…家族が待っているの」

「……」


「あなたは決して孤独ではないわ…」

「……」


「私と一緒に、少しだけ…世界を過去へと誘いましょう?」

「……」


「家族はそこにいますよ、イマリさんをみんな待ってます」

「……」



「家族に逢うために、オーブを…持って来て下さい」

「……はい」

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