第04話 赤と黒の衝突

闇の巫女が唐突に動いた。


ナルの足元…すねあたりへ、手裏剣が投擲とうてきされる。


ナルは難なくバックステップでかわしたが、その足が地につく前に、闇の巫女がナルの頭上に現れた。


闇の巫女は、えてジャンプさせるように手裏剣を投擲したのだろう…ナルの頭上に現れるのがあまりにも速い。


闇の巫女は無表情に、カタルを鋭く振り下ろした。


"ガキィン"


何とか《アマテラス》でカタルの刃を、受け止めたナルだったが、そこは空中だ。


《アマテラス》ごと地面に叩き付けられ、呻きをあげる。


カタルの刃は、追撃の手を緩めない。


背中を強く打ったナルの腹部へ、カタルが突き下ろされた。


ナルは地を転がり、起き上がりざまに思い切り《アマテラス》を横に薙いだ。


カタルはナルを捉え切れず、地を刺したあと、スッと後退する。


空を切り裂く音を上げながら走る《アマテラス》の切っ先は、闇の巫女の前髪を数本切ったにすぎない。


闇の巫女は、《アマテラス》の軌道を完全に読み切り、最小限な動きでかわしていた。


前髪を数本切らせた闇の巫女は、速い。


目の前を去っていく《アマテラス》の刃を横目に、ナルへと突進した。


「おぉりゃぁああ!」

同時にナルの叫びが洞窟内に響いた。


ナルの両腕は、骨が軋み、筋肉は悲鳴を上げる。


思い切り薙ぎ払っていた《アマテラス》を無理矢理、馬鹿力で切り返したのだ。


闇の巫女は、驚愕の表情を浮かべたが、黒瞳は、しっかり《アマテラス》の刃を捉えている。


切り返してきた《アマテラス》の刃を、闇の巫女は、宙に跳ねて華麗にかわした。


着地は、ナルの背後だ。


闇の巫女は、背後から、カタルを薙ぎ払う。


ナルは、一歩前に進み腰を落とした。

「おおぉりゃあ!」


切り返した《アマテラス》は止まらず、ナルの叫びと共に速度を上げる。


超高速な円運動が、闇の巫女を襲った。


"ブオンッ!"


《アマテラス》が切り裂いたのは、闇の巫女の残像だろうか。


虚しく空を切り裂いた音が洞窟に響いた。


同時にナルの左足…ふくはぎがスパっと横に裂かれ、血が噴き出した。


ナルの背後にはまだ、地に這い付くばるほど、超低姿勢でカタルを振り切った姿の、闇の巫女が潜んでいた。


闇の巫女は、超低姿勢から地を蹴り、ナルの首にカタルを突き刺そうと跳ね上がる。


ナルは《アマテラス》を手放した。


そして思い切り、闇の巫女の顔面に右拳を振り下ろす。


"ザシュッ"

"ドカッ"


二人の間に血飛沫が舞う。


カタルは、ナルの左頬と左肩を切り裂いた。


ナルの拳は、闇の巫女の顔面を見事に捉え、闇の巫女を吹き飛ばしていた。


ナルの手を離れた《アマテラス》は、私のギリギリ横を通りすぎ、壁に突き刺さっている……。


ナルは《アマテラス》へ疾走する。


闇の巫女はすでに、鼻から流した血を拭き取り、立ち上がっていた。


闇の巫女は手裏剣を投擲しつつ、手裏剣を追うように疾走する。


空を切り裂く音を上げながら複数の手裏剣がナルに迫った。


ナルは《アマテラス》を引き抜き、なんとか身体の前に《アマテラス》を構え、その腹で、手裏剣を防いだ。


しかし…


その手裏剣の最後尾は、闇の巫女だ。


ナルには、見えていただろうか…。


闇の巫女のカタルが思い切り、突き出された。


"ザシュッ"


カタルは、ナルの脇腹を大きく裂いた。


カタルは引き抜かれ、ナルの脇腹からは血が大量に噴き出し、飛沫をあげる。


闇の巫女の顔面は返り血に赤く染まり、悪魔か死神を思わせる様相を為していた。


「ナルっ!!」

私は叫んでいた。


ナルは、力無くその場に崩れ落ちた。


闇の巫女が、静かに近づきカタルを頭上に掲げた。

その瞳は、冷たく鋭い。


「ナルーー!!」

私は再び叫ぶ。


しかし、無情にもカタルは、ナルへ振り下ろされた。


"ドガッ"


銀の煌めきが目の前を走り、闇の巫女が吹き飛ばされる。


そして、目の前には《アマテラス》を振り抜いたナルが、肩で息をしながら立ち上がっていた。


「っナル!」


私はナルに飛び付き、ありったけの力を注ぎ込み治癒にあたる。


ナルは、青ざめた顔で、またいつ崩れ落ちてもおかしくない状態だ。



"ドス、トス、サクッ、ドス、トス"


私たちの周りに

手裏剣が突き刺さった……?

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