第5話 都会のオアシス

 少女の案内に導かれ、湊人は森の中へ入って行った。


まず、案内されたのは、木陰の中で長く続く細い川だった。

「ここは千川上水。昔は汚水が流れてたけど、今では生き物達の楽園よ。そして、あそこにいるのがカワミツよ。可愛いでしょ」

「へー、じゃあ、あの虫は何?」

「あれはハグロトンボよ。東京では中々見れないのよ」

「じゃあ、捕まえて持って帰ろう!」

「ダメよ。あの子達もやっと増えてきたばかりなの。その代わりにもっと珍しい生き物を見せてあげるわ」

そう言って、少女は更に人通りの少ない奥地へと進んだ。

自然が作り出す険しい土の道に時折、足を取られながらも何とか進む。

気がつけば、初めて東京を見た時と同じ位に湊人の心は高鳴っていた。


「さあ、着いたわ」

と、少女は穴の空いた土の前に何かを置き、湊人を少し離れた草むらの中に誘導する。

「今から何を見るの?」

「待ってて、もうすぐ来るから」


そうして待つ事、5分。

しゃがみ込んでる足に痺れを感じ始めた頃に、それらは穴の奥からヒクヒクと鼻を動かしながら、現れた。

「ほら、見てアズマモグラの親子よ」

「まさか、東京でモグラを見れるなんて!」

「まだまだ、こんなもんじゃないわ」

「まだ他にもいるの?」

「もちろんよ。カワセミやホンドタヌキにアブラコウモリも」

「タヌキやコウモリもいるんだ」

「じゃあ、次はその子達の所へ行こうか」

と、足取り軽く、次の目的地に到着した2人であったが、目の前の光景に少女は胸を痛める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る