第4話 木漏れ日
薄目を開けると、木漏れ日が優しく私を包み込んでいた。
風は林の中を走り抜け、涼しげな草木の香りを運んでくれている。
「目が覚めたの?」
そうだ、この香りは、この人と同じ。
湊人は、微笑みながら自分を見下ろす少女の目を見てニヤリと笑った。
ここは、天国で貴女は天使か。
と、目前の幸せを噛み締めていたが、頭に2つの柔らかい感触を感じて思わず、飛び起きた。
「うわぁ!」
湊人は肩で息をして、少女を見る。
歳は自分より少し上だろうか。風でなびく茶色髪は真っ直ぐ胸の位置まで伸びており、緑色のワンピースを着こなしている。
突然の事に少女も驚いていたが、湊人が元気そうで安堵した。
「お水飲む?」
湊人は少し警戒しつつも、ペットボトルを受け取り、何かの葉っぱの入った水に口をつける。
この葉の味だろうか? 舌の上を水が走る度に雷に打たれたかの様な衝撃が身体中を駆け巡る。
何とも言えない高揚感を前には、途中で返す事など出来ず、一気に飲み干してしまう。
「ごめん。全部、飲んじゃった」
「気にしないで」
全身に活力が戻った湊人は、改めて周囲を見渡す。
先程まであったビルは消え、人や車の騒音は一切しない。
風で揺れる枝や蝉の声が心地よく響いている。
心配そうな表情の湊人に少女が口を開く。
「大丈夫。ここは東京だよ」
「こんな田舎が東京のはずがないだろ!」
「本当よ。東京の武蔵野市。ここは昔から人と自然が共存してるのよ」
にわかに信じれない湊人であったが、木々の間から騒がしい車道を見つけて安堵した。
「本当だ。東京にもこんな所があるんだね」
「そうだよ。折角だから案内してあげる」
少女は湊人の手を引き、意気揚々と歩き始めた。
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