第2話 東京迷路

 頭の中をくすぐられている様なもどかしさを感じながら、真っ暗な画面がしばらく続く。

次第に暗闇は晴れていき、湊人は360°何も無い真っ白な空間に1人でポツンと立っていた。


ここは、天国か? と冗談を考えていると、目の前に天高くそびえ立つビルが突如、現れた。

その後も湊人の事は、お構いなしにビルは続々と現れ、白い空間はビルだらけの大迷宮と変貌を遂げた。


その内の1棟のビルへ目をやると、そこには幼き頃の自分がガラスに反射して映っていた。

半袖半ズボンにリュックを背負ってる姿を見る限りでは、恐らく8歳の時の自分。


「結構、可愛いな」

と、見惚れていると、既に周囲には多くの人々が現れていた。

サラリーマンや学生などなどが行き交っている。

見覚えがないが、ここに現れたという事は、私はこの人達に出会ったのだろう。


湊人はこれらの状況判断から1ページを開く。

「思い出した。この記憶は確か」


湊人は、小さい足で久しぶりの「走る」という感覚を噛みしめながら、走った。


「そうだ。あの時もこんな感じだった」


行き交う人々の隙間を通り抜け、湊人は走る。

照りつく太陽の下で、脱水症も気にせず、ただ走る。

あそこで両親と一緒に歩いてる子供の様に自分にもいる筈の両親を求めて。


そして、たどり着いた場所は「武蔵野境駅」 。

「やっぱり、そうだ。これは東京で迷子になった時の記憶だ」


今、頭の中で1ピースがハマった。

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