第4話 秀太郎、床屋へ行く

 秀太郎は、黒い手帳を持っている。そこには秀太郎の予定がかかれているらしい。


その1つが床屋だ。秀太郎は月に1度必ず床屋へ行く。きちんと、手帳の予定に従って。


 ここで疑問が湧く。口には出さないが、健も里子も泉も保も思っている。


 一体、床屋で、どこを切るのか。


 秀太郎の頭はつるっぱげではないけれど、つるっぱげに、かろうじて、毛が生えているような頭だ。毛と毛のすきまに、固そうな皮膚が見える。枯れすすきみたいだ。その貴重な毛を、切るのだろうか?


 床屋の人も困るのではないか?


 それでも、秀太郎は、月に1度は床屋へ行く。帰ってきた秀太郎の頭を見ても、どこがどう変わったのかわからない。


 それでも、秀太郎にとって、床屋通いは、毎月、黒い手帳に書き込まれる、重要な予定らしい。


 今日も秀太郎は床屋へ行く。


 枯れすすきは変わらないのに。


 そして家族の間で謎は深まるばかりなのだった。

 

 


 


 


 


 

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