第11話 モノ化主義者

 ずいぶん前。

 遠未来より遠くない未来のあるとき。


 人びとがこぞってモノ化するようになって久しい。

 身体の構造をほぐして、望むモノのかたちに再構成するテクノロジーが確立して、とある人びとが行なったのが生きているうちのモノ化だ。

 意識も残さず、記憶だけ刻む。

 記憶はどうしても幽霊のようにかすかに残るらしい。

 これは新たな自殺だ、と世間では騒がれた。

 変わる前の体と脳のデータが残るために、体を強化したり改造したりするのは日常的だ。

 ところがモノ化する人びとはたいていデータを残さない。

 そこで終えてしまうのだ。

 そういうことに使われるテクノロジーではないと、禁止する国も出てきたが、抜本的な解決には至らなかった。

 今の世がなんでもできるようになってしまったから?


 愛と人間性と

 最後に微塵も残さず消し尽くす


 それが


 いつまでもどこまでも一緒のありかたのひとつ


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