第3話 スターマップ

 地図には中心が必要である。現地球とするのがならわしだったが、永遠の始点・基準点とはいえないので、三次元構造に起こすときにAIがストラクチャバランスから最適化してくれるのがデフォルトになっている。ホームを設定しておけばもちろんそのように取り払ってくれる。移動手段が多様化し、距離のスケールがあまり意味をなさなくなってから、すべてがAIの自動計算か気にしないかのどちらかになっていた。ご近所感覚か旅ととらえるか冒険かとする、使用目的によってマップの見え方は色合いを変える。

 よく移動することは苦痛であり、なるべく短縮したい時間である、との認識があった。

 今や場所は個性であり、楽しみから人はそこらを歩くのだ。こだわりのポイントマップも星の数ほど紹介されており、チャレンジャーはイベントホライゾンを狙って次から次へと渡り歩いている。ブラックホールは肝試しスポットだ。いくらでもバックアップできるので気にかけないのと、再構成をじわりじわりと愉しむ人もいて、バンジージャンプ感覚である。

 異世界は死語になりつつある。世界の在り方が、今の私たちから見れば認識を変えざるを得なくなったからだ。言葉で説明も、数式等で表せるものでもない。複雑なまま、入り組んだ、込み入ったままが世界だととりあえず言っておく。逆にいえば、人間の科学的に解明できた世界はそういう科学的に解明した世界なのだ。直観的に把握できるものもいるのだが、そのなかに芸術家がいて作品は"もうひとつの小世界"という、敗北宣言とも取れたが、その世界にも行き来できるものがいることからまんざらでもないらしい。


 もはやマップはファッション感覚なのだ。


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