誓い
「ドオオオオオオ!」
レイジとスレ違い様に、勇誠は胴薙ぎを叩き込むが、レイジは気にせず勇誠を殴ろうとする。しかし、タケルが間に入ってそれを受け止め、
「だぁあああああ!」
タケルの拳が、レイジを襲う。
「ちぃ!」
だがレイジはギリギリで避け、一旦離れた。
「ふぅ、ふぅ」
レイジのコメカミがビキビキと躍動し、こちらを睨みつけてくる。
「ふざけんなよ。てめぇら全員ぶっ殺してやる!」
レイジはそう言って、こちらに突っ込んでくるが、
「ヤーグ・ヴェノーグ・ガーオ・ラーユン・ハグルン・フレイムショット!」
「ぐあっ!」
炎の弾丸がレイジに飛び、それが胴体に炸裂し、体を焼かれ、地面を転がる。
「くそ!くそ!」
転がって火を消しながら、レイジは悪態を吐く。
「オォオオオ!」
勇誠はそこに向かって突っ込み、木刀を振り下ろすが、レイジは腕を交差させて受け止め、押し返すと蹴って反撃。
「死ねやぁ!」
「っ!」
怯んだ所に、レイジの拳が顔面に炸裂し、勇誠は吹っ飛ぶ。
「先輩!」
タケルは驚いて吹っ飛んだ先の勇誠を目で追う中、
「調子に乗るなよ」
「な!」
レイジは間合いに入り込むと、タケルの腹に膝蹴りを叩き込む。
「げぼっ……」
「お前の能力は、腕に当てないと効果がない。腕にあたった攻撃は種別問わず、全て吸収し、お前の攻撃に上乗せできるが、そこ以外は無意味なんだよなぁ!」
そう言って、タケルの顔面に頭突きを叩き込むレイジ、
「えぇと」
魔実は呪文を考えるが、タケルに密着しているレイジに放つべき魔法が思いつかない。
「メェエエエエン!」
しかし、勇誠は起き上がると、レイジの脳天に後ろから攻撃を叩き込む。
「くっ!」
「はぁ!」
タケルがその隙に自身の拳を打ち合わせ、レイジの腹部に拳を叩き込む。
「ごぶぁ!」
変な声を漏らしながら、レイジは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
「な、何じゃこの騒ぎは!」
すると、屋敷の主が騒ぎに気づいて起きてくる。
「な!お前達賊か!?」
「どうみても賊を撃退してやってる側だろうが!」
勇誠は思わず叫びながらも、レイジの方を見る。舞い上がった土煙が晴れると、
「死ねやぁ!」
柱を掴み、それを強引に引き抜くと、投げつけてきた。
「わしの屋敷がぁ!」
「そんな事言ってる場合ですか!?」
魔実も思わず突っ込む中、勇誠とタケルは走り出し、スライディングで柱を避けると、レイジに突進。
『ハァ!』
同時攻撃でレイジに一撃を叩き込むと、レイジは防御しつつ後ろに飛び、床に手を突き刺し、ちゃぶ台返しの容量でひっくり返して来た。
「うぉ!」
「なんてパワー!」
ひっくり返った二人に追撃を掛けようとするレイジだったが、
「っ!」
振り上げた腕に矢が刺さり、レイジは飛んできた方を見る。そこには美矢を筆頭に、勇誠の仲間達がいた。
「ナイス美矢!」
レイジの視線の先にいた美矢に礼を言いつつ、勇誠は走ると、
「突きいいいいい!」
渾身の突きをレイジの眉間に叩き込む。
「がっ!」
吹っ飛ぶレイジ。だが勇誠の攻撃は止まらない。
「メン!ドー!」
続けて脳天に面打ちと胴打ちを叩き込み、振り返りながら木刀を振ると、背後に来ていたタケルがそれを受け止め、
「なめんなぁああああああ!」
レイジはその隙を見逃さず反撃しようとするが、
「アクアショット!」
水の塊が弾丸のようにレイジの頬を打ち、動きを止められる。そして、
「これで終わりだぁあああああああ!」
タケルの一撃が、レイジの顔面を捉え、メキメキと音を立て、ぶっ飛ばた。
顔面が陥没し、首がへし折れ、即死するレイジ。それを見届けると、
「やったな」
「はい!」
パンっと勇誠とタケルはハイタッチし、勝利を祝うのだった。
「つ、つまり賊の侵入をお前たちは防いだと」
「はい」
レイジを縛り上げたあと、屋敷の主人に説明すると、成程と納得。無事無罪放免にはなりそうだ。そう安堵していたのだが、
「ん?」
空がフンフン鼻を鳴らし、
「何か臭くねぇか?」
『え?』
皆も思わず鼻をフンフン鳴らすと、確かに焦げ臭い。
「何だ?」
勇誠は窓を見ると、
「燃えてる!?」
『ハァ!?』
全員で思わず窓の外を見た。すると確かに、庭園が燃え上がっていた。
「まずいまずい!とにかく脱出だ!」
「わ、私の財宝が!」
「命あってでしょうが!」
と、家主を空が持ち上げ、脱出しようとするが、
「タケル?」
タケルと美月は足を止め、勇誠を見た。
「俺、帰らないと」
「そうか」
タケルの言葉の意味、勇誠はそれを理解して頷く。
「行こう」
「うん」
そしてタケルと美月を残し、勇誠たちは走り去る。
パチパチと音がし、煙が屋敷に入り込んできた。
「ねぇタケル」
「なに?」
「ちゃんと助けに来てね。今度が私も呼ぶから」
「絶対に助けに行くよ」
タケルと美月は抱き合うと、屋敷が崩れていく。
だがそれでも二人は離れなかった。
忘れないように。ちゃんと思い出せるように。
そう願い、火の中に消えていくのだった。
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