第3話 聖女は面倒そう

「ロザリー先生!カティとアンナが!」


しばらく固まっていたベル先生がようやく動きだし、食堂で他の子供達と待っているロザリー先生のもとへ小走りで向かった。


子供部屋に残されたカティとアンナはお互いの顔を見て、目の色が変わったことに漸く気づく。


「カティ!目の色が変わってる!」

「アンナも変わってんな!」


同じ12歳の少女のはずだが、性格の違いがよく分かる第一声であった。


「こ、これって………聖女……になった…の?」

「うへぇ、面倒くせ……………。」


いつもなら怒られているカティの言葉遣いだが、今は先生がいないため誰も怒らない。


「面倒くさいの?」

「だって、聖女ってあのギラギラした偉そうな連中のとこに行くんだろ?絶対に面倒くさいに決まってる!」

「………た、確かに。」


孤児院は国の援助を貰って経営されているため、定期的に役人がやってくる。役人は孤児が挨拶をしても嫌そうな顔で睨んでくるだけで、先生達に金の無駄遣いはしていないか、もっと節約出来ないのか、と問いただしては援助金が入った袋を乱暴に机に投げて帰っていく。

役人は貴族であり、次男や三男のような家の跡取りではないため城で働いている男達だ。そのため、貴族である彼らが孤児を対等に扱うわけがない。


国の援助によって生きているとはいえ、最低限の衣食住で暮らしているカティ達が、貴族達に良い印象を持たないのも仕方なかった。

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