平凡な人生の最後
休む暇もないぐらい次々に言葉が出てくる
由美の仕事の愚痴や、親の話、◯◯が結婚したとか
友達の子供が可愛いだとかどうでもいいことも
あの頃に戻ったかのようにたくさん聞いたし
たくさん話した。
そうやって話しているうちに、今まで自分が
悩んでいたことがえらくちっぽけで
悩んでいることが馬鹿らしく思えてきた。
本が書けなくなった。なんてカッコつけて
本当は書いても書いても受賞しない
評価されない。結果が出ないことに
怖くなり、逃げていただけだった。
今考えてみればクソほどどうでもいい。
純粋に上だけを目指していたあの頃の方が
よっぽどかっこいいし、誇らしかった
由美のおかげで目を覚ます事ができた。
ようやく心に降っていた雨が止み始めた
俺「由美、ありがとう。
おれ、もう少し頑張ってみるよ!」
由美は一瞬顔に?を浮かべたがすぐに
いつもの笑顔へと戻った。
由美「最初は絶対私に読ませてよね。」と
全てを包み込むような由美の優しさが
心に染みたのか涙が溢れて止まらなかった
やっぱり由美には見透かされていたという
恥ずかしさも
あってか抱きついたまま離れる事が出来なかった
そんな俺を由美は優しく撫でてくれた
すごく安心した。まるで母親の温もりのような。
そこからはあまり鮮明には覚えていない。
ただ由美の服に涙でシミを作ったこと、
由美の唇は柔らかくて温かかったこと、
11月にしては冷えた寒い夜だったが
俺たち2人は熱く濃い夜を過ごしたということ。
そうして、腐り切った大野陽介としての
人生はあっけなく終わりを告げた
そしてここからある意味、
小説家、秋山桜としての人生がはじまります。
太陽の照らすさき 六堂 夜 @nomaru14
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