すぐさまおっさんに塩投げつけた

 ゴミ捨て場にくまのぬいぐるみが置いてあった。見た目はいたって普通のぬいぐるみ。ゴミ捨て場においてあるにしては綺麗な代物。だが、分かる人には害のある瘴気が立ちのぼっているのが見える。


 俺は物心ついた頃から幽霊が見えた。といっても怯えた記憶はない。だいたい無視か殴ればなんとかなったので、幽霊といっても俺にとって多くは雑魚。しかし、中には絶対に触れてはいけないものもいる。


 目の前にあるぬいぐるみもその類である。確実に呪われている。誰だこんな物騒なもんゴミ捨て場に置いたやつ。呪いテロか。たちの悪いいたずらか。

 無視するには良心が痛む。子供が衰弱死したなんてニュースをみた日にはいくら自分第一、他人なんか知るか精神で生きている俺でも目覚めが悪い。かといって、この手のものは装備もなく特攻するものではない。


 好都合というべきか、俺は心霊現象を扱う組織でバイトしていた。今日も事務所に行く途中だったので、行ったついでに上司に相談することにした。俺が来るまでの間、運の悪い奴が拾わないことを願う。


「人間は危ないものには近づかないという本能があるから大丈夫だと思うけど」


 事務所で状況を説明すると上司こと五条は淡々とそう告げた。霊感がなくとも本当にマズイものは無意識に避けて通るらしい。その話を聞いてホッとする。


「じゃあ、おっさんなみの不運かつ鈍感じゃなければ大丈夫ってことか」


 お清め用の塩やら呪符やらを用意しながらなんとなく出た言葉で俺は思わず手を止めた。同じく準備していた五条も苦い顔をしている。

 おっさんこと桜庭は不運が服を着て歩いているような男で、見えない、払えないくせにたちの悪いモノをホイホイ連れてくる厄介な存在だ。

 いくら不運なおっさんでもあんなヤバいもの気づかず持ってこないだろと嫌な予感を振り払っていると事務所のドアが開いた。


「くまのぬいぐるみ落ちてたんだけど」

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