大掃除の混ざり物
大量の本やら紙の束、果にはいつの時代からあるか分からない巻物に俺はため息をついた。
数年に一回程度の大掛かりな掃除の日、俺の教育係である緒方さんはハタキを持ってテキパキとホコリを払っている。
「棚から引っ張り出したら順番に並べて、リストでチェック。変なのが紛れ込んでたら大鷲さんに即報告」
緒方さんの言葉にうなずいて、俺は割り当てられた棚から荷物を引っ張り出す。数が多くてげんなりしたがここでは一番の新人である。先輩たちが真面目に作業しているのにサボるわけにもいかず、棚から箱を取り出してはホコリを払い分かりやすいように並べていく。
区切りのよい所で渡された資料と比べるとなぜか一つ多い。早速なにか紛れていることに気づいた俺は資料の写真と現物を見比べて異物を探した。
見つけたのは桐箱。手のひらサイズの小さなもので、ここにあるものは全て年代物だと聞いているがそれにしては新品のように綺麗だった。箱の表面にはなにも書かれておらず、これがなんなのか分からない。
すぐに大鷲さんに報告と言われていたが、中身が何だか分からなければ報告しようもないだろうと箱を開ける。そこにはなにかが入っていた。何かとしか形容しがいがない。黒いような、いや茶色? 赤? いややっぱり黒? 細いような気もするし太いような気もする。それがぐちゃぐちゃと押し込まれていて、見ているうちに妙に心が惹き込まれ、どうしようもなく触れたくなった。我慢できずに手を伸ばした俺の手を誰かが掴む。
邪魔するなと文句を言おうと顔を上げれば、緒方さんが鬼みたいな顔で俺を見下ろしていた。
「大鷲さんに即報告っていっただろ」
俺の手から桐箱を取り上げた緒方さんはすぐさま蓋を締めて、ポケットから取り出した御札を貼るとガムテープで容赦なくぐるぐる巻きにする。
その後俺は作業を続けたが、あれがなんだったのかは結局教えてもらえなかった。
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