第12話一八二三年、反射高炉と西洋帆船

 俺は反射高炉の建築技術を、高須藩と松前藩の藩士にも強制的に学ばせた。

 蘭国の技術者がいなくても、松前領の蝦夷と樺太で建築できるようにだ。

 だが藩士に過剰な期待をしているわけではない。

 大工や左官といった、平民の技術者にも学ばせた。

 技術を学び作れるようになったら、彼らに大量依頼すると約束して。


 問題は西洋帆船の建造だった。

 残念ながら高須藩には海がない。

 松前藩にも船大工などの技術者がいない。

 そこで仕方なく江戸で建造することにした。

 当然だが、蘭国の技術者以外に、藩士を建造責任者に任命している。

 

 建造責任者は、後に西洋帆船の船長になる男だ。

 忠誠心と武勇に秀でた者でなければいけない。

 今の俺には、高須藩の重役一門から選ぶしかなかった。

 本当ならば、新規に採用した武芸者から選びたかったが、忠誠心と言う所が信用しきれないし、この時代の常識である門閥意識を払拭出来るほど、御家存亡の重大事件も起こっていない。


 事を急いでしまったので、今も続けている藩士採用試合が、延々と続くことになってしまっている。

 北前船に乗船する武装藩士に加え、反射高炉と西洋帆船建造を学ぶ技術役方藩士に、蝦夷と樺太を開拓する屯田兵や郷士が緊急で必要なのだ。

 蝦夷と樺太を得た事で、交易の利益は確保できたが、領地の開発が全くできていないのだ。


 俺は未来を知っているから、蝦夷と言われている北海道が、一大農産地となる事を知っているし、サトウダイコンを生産する事で、畜産と製糖業で栄える事も理解しているから、一日でも早く開発に着手しなければいけないと考えていた。


「快速丸」

排水:五十トン

全長:二十一・八メートル

全幅:五・八メートル

吃水:

一本マストのカッター

六ポンド青銅砲:四門

一ポンド回旋砲:四門

建造費:二千両


「迅速丸」

排水:百トン

全長:二十四・六メートル

全幅:七・〇メートル

吃水:三・〇メートル

二本マストのスクナー

六ポンド青銅砲:十門

建造費:四千両


「千石船甲」

全長:二十三・七十五メートル

最大幅:七・二十四メートル

積石数:五百十二石

帆の大きさ:約百五十五畳


「千石船乙」

重量:約九十トン

全長:三十メートル

最大幅:七・四メートル

積石数:八百六十五石

帆の大きさ:約二百畳


「和船と西洋帆船の比較」

千石船の排水量二百トン(船の重量と同じ)

積載量:千石(約百五十トン)


「大型南蛮帆船」

重量 :一五七六トン

排水量:二二〇〇トン

全長 :六二・一メートル

全幅 :一三・三メートル

吃水 :四・四・メートル

三本マストフリゲート

二四ポンド長砲    :三〇門

三二ポンドカロネード砲:二〇門

二四ポンド艦首砲   :二門

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