鬼の群れが首都を襲う。

六本木に突如現れた鬼の群れが、


人々を襲い始めたのは、


朝の通勤ラッシュの真っ只中だった。


人々は何が起こったのか理解する間もなく襲われ、


そして逃げ惑った。


鬼たちは華やかな甲冑を着て、


美しい刀や金棒で、みやびに武装してはいたが、


凶暴性はまさに鬼そのものだった。


ちょうど現場に居合わせた二人の警官が、


鬼たちを制止しようとしたが、あっと言う間に血祭りに上げられた。

それを合図にしたかの様に東京23区全域に、


鬼たちどこからともなく現れた。


昨晩から続いていた衆議院での牛歩戦術により、


疲れ切った首相に報告が届いたのは、


鬼出没から1時間後だった。


しかし、首相が戒厳令を引く前に、


鬼たちによって情報網は遮断されていた。


鬼たちの規模や人数がどの程度なのか、誰も想像もできなかった。

かろうじて繋がっていた警察無線によって、


警視庁では都心の現状の把握に努めた。


分析の結果、警視総監は鬼たちの目標が、


会期中の国会議事堂である事に気づいた。


しかし、すでに主力の機動隊は、各所に釘付けになっており、


警視庁に残っているのは事務員ばかりだった。

 


警視総監は警視庁に残った事務方を武装させ、


自ら指揮を取り国会議事堂の堅めに急いだ。



警視総監の一隊が、


国会議事堂前を警備していた警官隊と合流した数分後に、


みやびな甲冑に身を包んだ恐ろしい形相の鬼たち群れ、


が国会議事堂前に集結し、警官隊に突入を開始した。


2時間に及ぶ攻防の末、


警視総監が指揮する警官隊は突破され、


鬼たちは国会議事堂へ流れ込んだ。


国会議事堂に入った鬼たちは、


それまでの凶暴さを一変させ、


内閣総理大臣と国会議員が待つ、


衆議院に威風堂々と歩いていった。


衆議院議長の提案で、衆議院は力による抵抗をやめ、


鬼たちと話合う為に鬼たちを衆議院に迎え入れる事になった。


衆議院に迎え入れらた首領らしき赤鬼が、


内閣総理大臣の前に進み出て、


鬼たちの要求を内閣総理大臣に伝えた。

「桃太郎をだせ!」

と。


鬼たちの要求は・・・数百年前に、


鬼が島を襲撃したあの桃太郎の身柄の引渡しだった。


冗談を言っているようには思えない鬼たちの真剣な表情に、


人々は恐怖した。



 おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る