第48話 トラは頼りになる?わけで
校長室に入室して迎えてくれたのは建造さんと……ジャックさんだろうか。初めて間近で見るから多分だけど。
それと校長先生に俺の担任テラ先である。ジャックさん、上から見ても大きいと思ったが近くで見ると大きいな……190センチくらいあるんじゃね? それでこの体型って迫力あるな。
「おぉ虎雄くん久しぶりだな」
入室すると直ぐに声をかけてくれるのは珠理亜の父親である
「虎雄くんこちら『Jack-in-the-box』の社長ジョン・オールコックだ」
建造さんに紹介された恰幅のいい金髪のおじさんことジョン・オールコックが手を差し伸べトラと握手をする。
「はじめましテ、ジャックって呼んでほしいョ。君が虎雄くんだネ。そして……」
思った以上に流暢な日本語で話すジャックさんは俺に視線を移す。俺は身構え来るべき衝撃に備える。
なにせこのジャックさん背も高く恰幅もいい。こんなのにハグされた日には俺はバラバラになる。なにせ俺の身の回りの人はハグの加減が強い人が多い。
ヌッと俺に近づくと握手を求めてくるので恐る恐る手を差し出すと優しく手を握ってくれる。
「心春ちゃん、よろしくネ」
「よろちくでしゅ」
ジェントルマンな対応に感心していると顎に手を置き俺を観察し始める。
「ふむ、モエだ。ほうほうモエだネ。うんモエ」
なんかモエモエ言いながら舐め回すように俺を観察し始める。なんだ変態か。
取り敢えずスカートを押さえ覗かれたりしないように気を付けておく。そのうち建造さんも観察の輪に入ってきてジャックさんと話しながら俺を観察する。
なんだこれ? おっさん2人に鑑賞されるってどんな仕打ちだ。校長先生とテラ先がこまった顔してる。トラは俺の様子を微笑んで見ている。いやここは微笑むとこじゃない。
俺は助けを求め手をパタパタすると嬉しそうに手を振ってくる。
ちげーよ。助けろよ。なにが「ボク色んなこと経験してみたい」だ先に空気読めるようになれよ! こいつ後で覚えてろよ。
トラが入るまでもなく俺の観察は終わり2人が話し始める。
「建造おもしろいネ。心春の需要はあるのかイ?」
「このフォルムでの需要はちょっとな。だが最新にはないまた別の可能性を秘めている。このモデルでの試作は今後の戦略展開において大きな意味を持つと思うんだが」
「うむぅ~一回能力見たいネ」
ジャックの提案に建造さんがトラに近づくと
「虎雄くん。もし良ければ心春くんの能力テストをしたいんだが。能力テストといっても簡単な運動能力と知能テストを行うだけなんだがどうだろう」
トラはチラッと俺を見る。もちろん俺は嫌なので幼女らしからぬ渋い顔反対する。あんまり期待してないけど一応「やりたくないよー」って気持ちを送っておく。
俺をチラッと見たトラが頷く。おっ? 今までにない反応だぞ!
「いえでも心春は運動神経悪いですし、頭も悪いのでテストしても仕方ないかと」
酷い言われようだが取り敢えず反対してくれた。
「虎雄くんきみは自分が作ったアンドロイドのテストをしたかね? これは心春くんの今後の健康の為にも役にたつのだよ」
「じゃあお願いします」
「ちょっと待ちやがれでしゅ!」
建造さんにいわれあっさり承諾するトラにキレる俺を建造さんとジャックさんが目を丸くして見る。
「トリャ! 勝手に決めるなでしゅ。わたちはやりたくないでしゅからね。そんなこと言うならお前の今日の
フンッと怒る俺とシュンとするトラをワナワナと体全身を震わせながら建造さんたちが見ている。
「なんだ、アンドロイドが怒って、しかも仕返しの仕方が小さいと言うか人間の子供みたいだ」
「建造この子は本当にアンドロイドなのカ?」
仕返しが小さいとか余計なお世話だが俺の発言に余計に興味を持たれてしまったようでおじさん2人が俺を揺さぶってくる。
「心春くん是非とも君の能力をみたい! これはアンドロイドの未来がかかっているんだ」
「わたしも知りたいネ。すぐにでもテストやろうョ」
「あわわわわわ」
2人のおっさんに迫られる幼女俺は揺さぶられて震えてるのか怖くて震えているか分からなくなる。
「建造さん、ダメです」
トラが俺の前に割って入ってきておっさんたちから助けてくれる。
おぉ! トラが俺を助けてくれるって初めてじゃね? しかもトラの目は真剣だ。こ、これはあれだ。
來実や珠理亜、彩葉を落としたときにした目だ! も、もしかして俺も攻略対象なのか!? なんかカッコよくないか? 元俺なのに。
ちょっとドキドキな俺。
「建造さん、ジャックさん。今はお昼休みで学校の時間です。テストは放課後にしませんか? 心春も動ける格好ではありませんし、建造さんたちも準備して万全の体制で挑んだ方が良いと思います」
「おぉすまない。流石、珠理亜が認めた男だ。感情的になる私を止めてくれてありがとう。そうやって言ってくれる人が周りにいなくてな。虎雄くんには期待してるよ」
「建造から聞いてたけどこれならAMEMIYAグループも安泰だネ」
「はい」
「はい」じゃねえよ! 俺はトラをポカ♪ っと蹴る。なんかよく分からんがこのドキドキを返せ!! 俺はもう一度トラを蹴る。
勝手に俺のテストは決まり校長先生の好意で学校の教室とグランド使用許可まで出すという余計なことをしやがってくれる。
そして今俺は母さんに電話している。
「えっとでしゅね。こはりゅ、テストしゅることになったんでしゅけど動ける服ジャージとか持ってきて欲しいでしゅ」
もしかしたら母さんが反対してくれないかなあとかちょっと期待しながら事情を説明すると
〈運動って学校なの? 学校なのね。まさか役に立つ日が来るなんて今日はお祝いね! まってて心春ちゃん今いくから──」
興奮気味の母さんの電話がブツリと切れる。あぁこれはダメだ……テストやるしかない。ちょっぴり涙目の俺はスマホをソッとポシェットに入れる。
────────────────────────────────────────
次回
『心春は小姑なわけで』
テスト、なんて嫌な響きなんでしょうか。テストを楽しめるような人間になりたいです。
御意見、感想などお聞かせ頂けたら嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます