第53話

今週中に終話を向かえる予定です。間に合わせます!

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 翌日パスポートの申請を済ませ自宅まで高木さんに送ってもらった。


 高木さんには特に持ち物は身の回り品だけ用意すれば後は会社の方で手配するから要らないと言われている。数枚の着替えを瑞穂に借りた小型のキャリーケースに押し込んだら準備はそれで終わってしまった。


 おばあちゃんと純生さんには来週から暫く留守にするから、瑞穂のことをよろしくと連絡をし、お願いしておいた。

 隠すことではないので、父親の状態のことも分かる範囲で伝えておいた。


 おばあちゃんは北海道から戻って来ようとしたけど、丁重にお断りしてご自身の療養を優先してもらった。


 純生さんには申し訳ないが、かすみ荘の瑞穂だけでは出来ないようなことを頼んでおいた。


「なんだか、貴匡くんがここのオーナーみたいだな。本当は私がしっかりしないといけないのに貴匡くんに頼り切ってしまっていたよ」

 純生さんにはそう謝られたけど、そのようなことは思っていなかったのでちょっと驚いた。



 翌日、一学期の打ち上げと夏休みの宿題を四人で一緒にやろうと言っていたので約束通り鉄平とゆかりもかすみ荘に来た。昨日は瑞穂が簡素に『今日は駄目みたい』とだけ二人に連絡してくれたけど今日は僕がすっかり連絡するのを忘れていたために二人はかすみ荘にやってきてしまった。鉄平とゆかりの二人は僕に気を使って直ぐ帰ろうとしていたが、僕は敢えて引き止めて帰らないでもらいたかった。


「二人共よく来てくれた。さ、宿題やっちゃおうよ。僕は一週間しか時間無いんだから頼むよ。それに……いてもらえた方が助かる」


「あ、いや。貴匡、大丈夫なのか?」


「どうだろう? 駄目なときは瑞穂に甘えまくって慰めてもらっているから平気だと思うよ」


 昼間はまだ大丈夫だけど、寝る前とかちょっときついので、瑞穂には悪いが甘えさせてもらっている。


「瑞穂ちゃんはしっかりと貴匡を支えているんだね。敵わないわけだよ」

「当たり前だよ、ゆかりん。私と貴匡くんは一心同体だもんね」


「それで、お前たちはどうなったんだよ? ゆかりは鉄平に、とかわけわからんこと言ったんだろ?」


 後からゆかりも意味不明なこと言ったことに気づいたらしく、しっかりと鉄平の告白を受け付き合うことになったようだ。二人して真っ赤になっているのは初々しくてほっこりする。

「二人とも、おめでとう」

「「ありがとう」」



 そんなこんなで日中は宿題をやって、夜は瑞穂に甘えたり甘えられたりを繰り返し、やっとパスポートが発行された。


 毎日、シモンズさんには父親の様態を教えてもらっていたので、そんなには不安感に駆られることは無かった。

 今はもうICUを出て、一般の個室病室にいるとのことだ。但し、未だ父の意識は戻っていないのが心配だという。


「それでは。明日の夕方に成田からの直行便で行くから、ここには昼前に迎えに来るから用意しておいてくれ」

「わかりました。でも、直行便てチケット高くないですか?」


 僕も航空便を調べてみたけど、直行便は乗り換え便の倍ぐらいの代金だった。


「旅費は会社持ちだから気にしないで良いよ。特に君は気にしないで。僕だって一三時間の直行便と二四時間前後の乗り換え便では直行便が良いもの」


「ありがとう御座います。僕も少しでも早く病院に行きたいですから嬉しいです」

 到着しても現地は夕方だから病院には行けないらしいけど、父親との物理的距離がぐっと近いだけで安心感が違うと思うんだよな。







 ――現地に到着。

 機内で寝てしまったので、夕方に日本を発って夕方に到着しているので頭の混乱が収まらない。


 空港には、父親の会社の人が迎えに来てくれていた。

 その中に、特に目を真っ赤のしたきれいな女性が一人。もしかしてと思ったら、そうだった。


「遠いところ来てくれてありがとう。私はマリーナ・シモンズです……Oh……takamasa!」

 僕からの挨拶をする前に泣き顔のシモンズさんに抱きしめられてしまった。


 柔らかくって大人の女性って感じが凄く良い……って! そうじゃなくて! 助けて!


「マリー! 落ち着いて。貴匡が苦しそうだよ?」

 やっとシモンズさんは僕を離してくれた。


「こんばんは。はじめまして貴臣の息子の貴匡です。この度は父がご迷惑おかけしました。いろいろと手配いただいてありがとうございます」

 迎えに来てくれた男性、たぶん日本人とシモンズさんに改めて挨拶をする。


「取り敢えず軽く飯食って、貴匡くんを部屋に送っていってやろう。今日のところは、時差に慣れるのも必要だろうし」

 高木さんがそう言うと車に乗って市街地に向かった。


 ずっと機内で動いていなかったせいもあって、そんなにお腹は空いていない僕が言うと『軽くていいなら』とファストフードになった。

 丁度いいやと思っていたのに、店に入り椅子に座って大人しく待っていたらとんでもないやつが出てきた。


 ホットドックのソーセージがロブスターになっているやつに山盛りのポテト、マグカップ並のカップになみなみのクラムチャウダースープ。


「ねえ、高木さん。これのどこが軽いやつなのですか?」

「ん? 後で肉料理でも食ってみればこれが軽いんだなって分かるから。意外とぺろりとイケるよ」


 どうしようと無言でいたら、シモンズさん改めマリーさんが甲斐甲斐しく僕の世話を焼いてくれる。何も出来ない子供のようで恥ずかしい。

 高木さんともうひとりのお迎えの男性、鬼頭さんがニヤニヤしながらからかってくる。



 二〇時過ぎ、ホテルの部屋に入ってやっと一息つく。スマホにWi-Fiもセット出来たので、瑞穂に連絡を入れる。

 無事到着したこと、明日病院に行くことなど今日あったいろいろなことを話した。一四時間の時差だとちょうど日本が昼前なので話しが出来てよかった。

 瑞穂の声を聞くだけで癒やされる。テレビ電話が良かったけど、瑞穂に渡した僕のお古のスマホはインカメラのノイズも酷いので諦めた。

 早く気づいていれば買い替えていたのだけれど、今更言っても仕方ないので声だけで満足する。


 あっという間に二二時を過ぎたけど眠くならない。瑞穂が電話を切る前にこれからお昼ごはん作らなきゃって言っていたように、僕の身体もお昼なのだ。


 腹が減ったらこれを食っておけと、これまたでっかいハンバーガーを鬼頭さんに貰ったけど、これ食って腹膨らませて寝よう。昼寝感覚だけどマジで寝ないと明日保たない気がする。


「これでレギュラーサイズってどうなってんだよ………」

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