第50話
今日は早めの更新です。深夜にもう1本の予定……
よろしくおねがいしたします。
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帰宅して夕食を食べ始めると暫くして小包が届いた。夕方時間指定で何か買ったっけ?
「貴匡くん、誰から? おばあちゃんかな?」
「そうだね。おばあちゃんだ。発送元は……
「私には美幌町がどこら辺なのか分からないけど網走って北の果てなイメージだけどどうなの?」
僕も分からないのでスマホのマップを開いて瑞穂に見せる。
食事の最中なのに行儀が悪いったらありゃしないけど、咎めるものが誰もいないので最近の僕らはだらしない事を自覚している。そろそろちゃんとしようとは思っている。思っては、いる。
「北の方だね」
「そもそもおばあちゃんはなんでそんなところにいるんだよ?」
ちょこちょことおばあちゃんからは連絡が来ていたけど北から南までよくもまあ移動し続けている。
「てんさい糖と北見のハッカ油だって。あ、封筒も入っている、手紙のようだよ」
「ん? 珍しい。瑞穂宛てだから読んでみなよ」
「………ふむ……へ? ……ほうほう……ウム……ええええっ」
瑞穂が手紙を呼んでいるが、難しい顔をしたり驚いたような顔をしたり忙しい。
何かとんでもないことでも書いてあるのだろうか? おばあちゃんの身に何か起きたのだろうか?
確かおばあちゃんは七五歳を超えた辺りだったはずなので、長距離の移動で足の調子が悪くなっていたり他の病が出てしまったりしたのだろうか?
非常に心配だ。もしそうであるのなら無理矢理にでも連れ帰ってゆっくりと養生させてあげたいと思う。
「……はぁ~」
手紙を読み終わった瑞穂がため息をつく。
その表情には若干の憔悴を感じる。
やっぱり良くない状況なのか?
「み、瑞穂。おばあちゃんはなんと書いてきたんだ?」
我慢できずに、瑞穂の肩を掴み聞きただしてしまう。
「あ、うん。貴匡くん。おばあちゃんね、一言でいうと『さすおば』だね」
「瑞穂……何を言っているかさっぱりだよ。ホント四文字で済まさないで!」
瑞穂から手紙を渡されて自分で読んで見る。
「うん。ごめん、瑞穂のいうとおりだった。『さすおば』だね。四文字でいいや」
「おばあちゃん、やること斜め上過ぎだね。これは想像してなかった」
おばあちゃんは今、『彼氏』と日本全国にあるその彼氏の持つ賃貸物件や貸別荘などを一緒に周っているそうだ。
おばあちゃん、彼氏いたんだ。全く知らなかったよ。
それで今は暑いと身体も辛いので涼しい北海道の美幌町の外れにあるその彼氏とその弟が共同経営している農場に厄介になっていると書いてあった。
彼氏さん実業家じゃない! おばあちゃんとはおばあちゃん所有の土地の賃借の件で知り合いになったと書いてある。
彼氏さんのお年は『七三歳で年下なの、うふふ』と書いてあるが誤差じゃね? と思ったりする。
二人とも歳も歳で、資産も双方ともにかなり持っているので結婚などは争いのもとになりそうなのでしないそうだ。ちゃんと遺書も用意してあるから安心してと書いてある。
それで簡単に遺書の内容が書いてあるのだけれど、孫の瑞穂にはこのかすみ荘と周辺の畑等々が渡される手はずになっているそうだ。
残りは純生さんちと僕は会ったこと無い次男の義生さんちに分けられるみたいだ。
まあ、普通の感じの分配だとは思う。
袋とじで貴匡くんへと書いてある便箋も一緒になっていて、瑞穂は開けてはいないので、宛先である僕が開けてみる。
どうも他人である僕にも、残されるものがあるようだ。
『瑞穂を貰って頂戴、頼んだわよ』と1行だけ。
言われなくとも貰うつもりしか無いですけど、保護者の許可が下りたということで今後も何の心配もなく瑞穂を愛でたいと思う次第です。
瑞穂にこれを言っちゃうと、もうベッドを買い換えないといけないくらいになりそうなので、内緒にしておく。気になっているようだけど教えてあげない。
「大丈夫。変なことは書いていないよ。瑞穂のことをよろしくね、って感じのことが書いてあるだけだよ」
「じゃあ、見せてよ」
「駄目……いつか必ず見せてあげるからその時まで待って」
「う~ 仕方ない。我慢するよ」
おばあちゃんはリハビリ逃避行中にとある名医に足を診てもらい日帰り手術までして今は傷みもなく歩き回っているそうだ。
「純生にも義生にも同じ内容のもの送っておいたから連絡しなくて平気ですよ。秋には帰る予定です。では元気で!」
とおばあちゃんの手紙は最後に締められていた。
枯れてなお新しい花を咲かすとはさすがおばあちゃんである、さすおば。
おばあちゃんのことはその彼氏に任せって放っておくとして、近々の問題として鉄平とゆかりをどうするかが悩みどころ。
「いっそ、二人を布団が一組敷いただけの部屋に薄いの一箱と一緒に閉じ込めちゃえばいいか?」
「貴匡くんじゃないのだから、鉄平くんはそれでもヘタれるんじゃないのかな?」
「瑞穂に『貴匡くんじゃないから』とは言われたくないけど、鉄平の方はありうるもんな」
「あ、私達が悩んでも仕方ないから、一緒にお風呂入りましょう。沸いたみたいだよ」
ピロピロした電子音はお湯はり完了の音か……食事の後に丁度いい間隔を空けて風呂を準備するとは全くもって用意がいい。
小包で届いていたハッカ油を数滴ほど風呂に垂らすと風呂上がりが爽快で気持ちいいとパッケージに書いてある。
但し、大量にはぜったいに入れてはいけないと注意書きがある。ダチョウな三人組のフリじゃないよな? 本当にダメなやつなのだろう。
「いい匂いだし、本当にスースーするね」
「うん、でも少し入れすぎたかな? ちょっとかぁ~っとする場所もあるね」
「それはハッカ油を湯船に入れても入れなくても一緒のところじゃないかな?」
「そうかな? 確かめる必要あるかな?」
「あるね! 私も実はすごくかぁ~っとしているの。貴匡くんに確かめてもらいたいから、早くベッドに行こう」
すでに僕たちに理由は必要ない気がするけど、何かに付けて理由をつけてはイチャイチャするんだよね。目立っていると言われるのも強ち間違いでは無い気がする。
取り敢えず、もう鉄平のことは明日でいいや。
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