第48話

 四人で登校し、帰りも四人で下校する。


 突如始まった僕らの行動にクラスメートやゆかりや鉄平のファンたちはどよめいた。


 因みにみんなが関心あるのはゆかりと鉄平の関係性。ゆかりの僕への行動、周囲からは奇行と見られていたらしい、が終わったのは周知のこと。


 だからなのか僕と瑞穂には一切の関心は向けられていないようだ。


 陰キャ×陰キャは所詮陰キャということみたいだ。ふふん、勝手に言っていればいいさ。僕たちは少なくとも君たちよりもオ・ト・ナなのは違いないだろうかね!


 つまらないマウントを心のなかでとってちょっと悲しくなった。ぴえん。


 さて、以前から近くしくはあったが、ここへ来てゆかりと鉄平が急接近なのではないかという噂がどよめきの正体のようだ。


 が言っていたので間違いない。


 というか、そこまで知っているならゆかりは鉄平のことをもっと見てあげて!

 鉄平も外堀埋まってこんもり山になっているくらいなのだから一気に本丸をもう落としてくれないかな?


 あ、今落とされると部屋割が変わって勉強どころではなくなりそうなので、テストが終わるまではやっぱりそのままでオネガイシマス。

 僕も瑞穂ももんもんとした気持ちを勉学に向けて昇華しているんだから頼んだよ。


 それでも……ということならば、鉄平。うすいの一箱ご進呈差し上げよう。


 バコンッ


「いたひ~」

「貴匡、おまえ、またおかしなこと考えていただろ?」


「ソンナコトナイヨ……今晩のおかずは何かなぁって考えていただけだよ?」

「ホントかよ?」


「貴匡くん。夕飯はカレーにします。簡単煮込むだけで有効的に勉強に時間を割けるからね」

「さすがは瑞穂。ちゃんと考えているね」


「ありがとう、貴匡く~ん」

 瑞穂は僕の右腕に体を寄せて甘えてくるので、僕は瑞穂の頭を撫でてあげる。


「こらこら。いちゃつきは禁止だよ。また漢字の書き取りが増えちゃうよ~」

「いや、ゆかり。これは瑞穂のことを褒めているだけで最小限のスキンシップに過ぎないぞ」


「そうだよ~ ゆかりんも鉄平くんと手でも繋いで見れば分かるよ~ ただのスキンシップだよ~」

 お! 上手いことそっちに話題を振ったね! さすがの瑞穂ちゃん。もっと撫でてあげる、なでなで。


 ゆかりと鉄平は互いの顔と手に目を彷徨かせながら頬をほんのり赤く染めている。

(おやおや進展がありますか⁉)


「もう! バカなこと言っていないで早く買い物を済ませちゃいましょうっ」

 そう言うとゆかりは早足で先に歩いていってしまう。


 買い物を済ませるって、まだスーパーマーケットまでそこそこの距離あるぜ?

 照れ隠しがみえみえなのは、鉄平にも脈アリということだろうな。まあ僕はそんな事を言えるだけの経験値を貯めてないから正答率は相応低いだろうけど。


「ま、いいや。おい鉄平。ボーッとしていないでゆかりを追いかけるぞ~」


 鉄平は自分の手のひらをグーパーしながらぼやぁ~っとしていた。


 おいおい、手を繋いだらどうって唆されただけでそんな調子じゃ童貞かよって思われるぜ?


「貴匡だってついこの間まで似たようなものか、それ以下だったくせに生意気だぞ?」

 なんで心を読むんだよ?


「最近、お前は無表情じゃなくなってきたから、何を考えているかぐらいは分かるんだよ、貴匡」

 そっか。それもこれも瑞穂のお陰だな。撫でておこう、なでなでなで。


「おまえら、それ以上やっていたら一ページな。さ、ゆかりを追いかけよう。もう見えないぐらい先に行ってしまったようだよ」


 鉄平もゆかりを追いかけ走っていってしまった。


「なんだか、あの二人もいい感じになってきたね。エモいよ」

「そうだな。いつもなんだかんだあの二人には助けられることも多いから、幸せになってもらいたいね」


「でもどうせなら 『俺、このテストが終わったらゆかりに告白するよ』 ぐらいは言ってほしかったよねぇ~」

「瑞穂。それなにかのフラグになるから言っちゃダメなやつ……」

「?」

「……キニシナイデ」



 それから数日間はエモいこともエロいことも全く起こらず、只管勉強に明け暮れるだけだった。


「たぶん生まれてから一番勉強したし、今後もこれ以上は勉強することは無いかもしれない……」


「高校二年生になってどれだけ勉強もせず、有限の時間をエロいことに費やしていたかわかったでしょ? 二人共今後は予習復習のあとでヨロシクやってよね?」

「「はーい」」


 ゆかりはオープンな性格ではあったけどここまでシモネタに寛容だったっけ? 自分から思いっきり言っちゃっているし。


「なに? 貴匡。私がシモネタを言っちゃ駄目なの? てか、この四人の前でしか言わないからね?!」


「え? 俺も含めてくれるの?」

 おろろ⁉ 鉄平の方が驚いているぞ。


「え、あ、だって、鉄平くんは……い、一番仲のいい友人じゃない? ね? ね? 瑞穂ちゃんもそう思うよね?」


 ああ。自分のこと棚に上げるのも何だけど、他人の恋愛のこのじれったさは見ていられないね。


 もうお互い意識しまくっているのが傍から見てモロわかりなのに当の本人たちのわかりみが足りなさすぎる。

 めんどくせー奴らだな。


「もう来週からは一週間通しでテストだから、今日まではガッツリやって、明日の午前中は少し軽めに月曜日のテスト教科の分だけやって後はゆっくりしないか?」


「軽く合宿の打ち上げって感じで良いのかな? 貴匡くん」

 区切りをつけるって意味でも、軽く何かやっておきたいと思うんだ。


「その通り。テストが全部終わったら本格的に打ち上げって感じで遊ぼうよ。明日はお昼過ぎには二人共帰っちゃうんだろ?」


「そうだね。俺もテスト期間中は家にいないとね。体調管理に失敗してもいけないからな」


「そうだよね。みんなで勉強するのも効果的だったし楽しかったけれど、テスト期間中は、ね。やっぱり自宅からだよね」


 万全の体制と体調でテストに臨まなくてはイケマセン‼ 頭も身体も軽くしてストレスフリーな状態でテストウィークを制しましょう。





 翌日の昼ごはんを打ち上げパーティーと銘打って四人で食事を作って大騒ぎして楽しく過ごした。僕は皿を並べて、少しだけ盛り付けをしただけだったけど……


「ありがとう。明日からのテスト、頑張ろうな!」

「おう。貴匡も瑞穂ちゃんも頑張れよ。俺も頑張ってまた一位を狙うよ!」


「じゃあね、二人共。この後私達がいないからって羽目を外さないでよ? あ、外すんじゃなくてアレを嵌めるのね?」

「ううう。ゆかりんが壊れていく~」


 うちに来たときよりも鉄平とゆかりの距離感も実際の距離も近くなっている。

 夏休み前にはもしかしたらもしかするかもね。


 そんなことよりも、おまえら早く帰ってくれよ。


 僕と瑞穂はもう一週間我慢したからウズウズして仕方ないんだからね。







 今からなら四時間……五時間はイケるかな?


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