第43話

 寝室にしようとしている北側の部屋は床がフローリングになっている。


 他の部屋が畳敷きなのに対しこの部屋がフローリングなのは、以前住んでいた住人が畳をカビだらけにしたためだ。

 畳表たたみおもてだけでなく内部にまで傷みがあって畳まるごと全交換を余儀よぎなくされたおばあちゃんは、もう面倒だということで、この部屋と隣の部屋も全て板張り床にしてしまった。

 ついでとばかりにも畳敷きからフローリングに変えて、呼び名までに変えたということみたいだ。

 だからこの家の畳の部屋は、一階はおばあちゃんの部屋、二階は僕と瑞穂の部屋だけになっている。

 僕の生家は畳の部屋が一つもなかったので、自分の部屋が畳敷きなのがとても気に入っている。

 これからの寝室はフローリングだけど、まあ、いろいろと匂いとか汚れとか考えるとソッチのほうが良いのかもな……

 瑞穂……日に日に激しさ増してきている気もしなくもなくもない。瑞穂にそんなコト言えないけど。


 そんな事を考えながらBBQの道具を物置から出してくる。先日使ったばかりなのでサビも出ていないし、軽くホコリを水道水で流し落とすだけで問題ないだろう。


 鉄平と二人で立水栓のところでジャバジャバ鉄板や焼き網を洗っていると瑞穂とゆかりがやってくる。


「貴匡。瑞穂ちゃんと買い物行ってくるけど、普通のBBQの材料以外でないか欲しい物ある?」

「あれ、瑞穂はもう大丈夫なのか?」


「うん。もう落ち着いた。少し動いたほうがどっちかと言うと楽だからゆかりんと行ってくるね」

「じゃあ、さば……鯖ね。あともし冷凍物の秋刀魚とかあったら良いかもしれない。あれも炭火で焼くと美味いよ」


「鯖と秋刀魚ね。鉄平は?」

「う~ん。赤身肉のステーキが良いかな? オージーとかアメリカンなクソ安いやつで十分。それとすりおろしにんにく」


「新道くん。すりおろしにんにくは冷蔵庫にあるからそれを使ってくだい」

「おーけ、じゃあ。そんぐらいかな?」


「「ではいってきま~す」」

「「いってら~」」



 BBQセットは適当に水を切っただけで、東屋の横に設置していった。どうせ他の用意をしている間に乾くだろう。

 キャンプ用の椅子とテーブルも一応用意しておいた。東屋にも腰掛けとテーブルはあるけど雰囲気的なものがね。


「貴匡。おまえ、料理できなかったよな。包丁とか使えるか?」

「まあ、使えないこともないが、食材は赤く染まること手を切って血だらけ間違いないだろうな」

「うん、分かった。それ使えないってことだから」

「ま、まさか! 鉄平は包丁が使えるのか!」


 一々小芝居がかって五月蝿いと鉄平に呆れられた。


 しょうがないじゃないか? こういうイベント的なのって本当に久しぶりなのだからはしゃいでもいいじゃん。瑞穂と二人きりも良いけど、みんなでワイワイとか僕には無かったからね。


 炭やトング、掃除用具にバケツに水をたっぷり入れたバケツなど、後から行ったり来たりをしないように準備しておく。

 行ったり来たりと行っても、東屋は物置の直ぐ裏なのだけどね。


「さて、道具の方はこれで一旦はいいから食材の方をちょっと下拵したごしらえしておこうぜ」

「鉄平先生。お願いします」

「ウム。貴匡くん、キミは基本皿運びとクーラボックス担当だな。下手にいろいろ触らないように」

「御意」


 面倒くさいから普通に話してくれと言われたので戻す。自分だって乗ってきたくせにずるいやつだな。


「玉ねぎってある?」

「ああ、こっちの食料庫の中にあるよ。イモ類も結構あるけど?」

「芋もいいけど、芋を食っちゃうと腹が一杯になって他のもの食えなくなるんだよな」

「じゃ、止めておこう」

 どうせならいろいろ食べたいし、お腹いっぱいで直ぐお開きとか嫌だからね。


 先に僕たちで用意しておいたもの、鉄平たちがさっき持ってきてくれたものなどの用意は終わったのでひとまずラップなどをかけて冷蔵庫にいれておく。


 瑞穂とゆかりが帰ってくるまでは暇なので、ベッドの箱などを解体して時間をつぶすことにした。


「なあ貴匡」

「ん?」

 ベッドの箱の中身を出しながら話しかけられる。


「おまえ、平林さんと付き合うようになって変わったよな」

「そうか?」


「ああ、平林さんの方もだいぶ変わった気がする」

「うん。はたから見てどう変わったのかな?」


「刺々しさが二人共おさまって、柔らかくなってきたって感じなのかな」

「刺々しい……」


「え? 気づいてなかったのか? 周りを近づけさせないような雰囲気出しちゃって俺やゆかりみたいにお前のこと知っているならば別だけどそうじゃないやつは近づけなかったよ」


 貴匡がそうなったのも周りが悪いのだけどな、と鉄平は付け加える。


「平林さんも孤独感がすごいっていうか、なんというか近寄り難かったよな。よく、お前が声かけられたよな。まあなんか感じるものでもあったのだろうけどさ」



 あの時声をかけたのも偶然だし、道に迷っている瑞穂を見かけたのも偶然。

 その時の目的地は僕の住んでいるこのかすみ荘で、しかも大家のおばあちゃんの孫が瑞穂。

 その瑞穂と僕は現在交際していて、短い間にかなり深い仲になってしまった。

 その上お互いに今まで感じたこともない素晴らしいパートナーに出会えたと思っているくらいだ。

 高校生のガキが何を言っているのだとも思うかもしれないが交際を機に実際に僕も瑞穂も良いほうに変わっていっている。

 運命なんてものは信じないけど、なにか大きな力が働いていると言われても今なら信じてしまうかもしれない。



「うん。ナニカあったんだろうね。僕にも彼女にもわからないナニカがね」

「ほんと変わったな。もう夜の街に喧嘩しに出かけることはなさそうで何よりだ、オフッ」

 鉄平の横っ腹に軽くグーパンいれてやった。一言余計なんだよ!


「「ただいま~ 買ってきたよ」」

「おかえり~ じゃあ、火を付けるから食材の方よろしくね! ほら鉄平も!」


 若干拗ねている鉄平を起こして、準備を再開する。


 お昼を少し過ぎたけど、すげー楽しみだ!!
















「うわっ! 前髪が燃えた!」

「鉄平渾身の体を張ったギャグだな。動画撮ってあるからアップしておこう」



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更新が定まらなくてほんとスミマセン!

いつもありがとうございます。別作 https://kakuyomu.jp/works/1177354055637392015

を書いていますので、少し投稿がばらついてしまいます。申し訳ございませんがご容赦と★で応援をよろしくお願い致します!

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