第44話
非常に遅れました。スミマセン……
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「前髪、無くなったな。まあ、次の月曜日まで何日かあるし大丈夫だろ?」
「貴匡っ、大丈夫なわけ……無いだろ!」
鉄平は燃えた前髪を何度も触っているけど、いくら触ったところで元には戻りっこない。
「まあまあ。火傷、プッ、しなかっただけ、プッ、いいじゃ、プッ、ない? プッ」
「ゆかりん。笑いをこらえきれてないよ……新どぅクククッんンンもっ……プークスクス」
ゆかりも瑞穂も酷いな。全く笑いを堪えきれていない。
僕のように無心になれば鉄平の姿を見ても笑いなど起こりっこないのにな。
とは言えこれ以上おもしろフェイスでいられるとBBQも先に進まないので、一旦僕は家に戻り何でもいいから鉄平のために帽子をとってくることにした。
――――
――
「これしか見つからなかった。よく考えたら僕は帽子を被らないから一つも持ってなかったよ」
玄関脇の戸棚を漁ってみたら、使っていない帽子が一つ見つかったので無いよりはマシなのでそれを持ってきてやった。
「これでも被っていてくれよ。一周まわってお洒落だと思うよ?」
「何でそこで疑問形なんだよ。まあ、いいよ。有り難く被らせてもらうよ」
僕が鉄平に持ってきた帽子はつばの上に『農○』と書かれ稲のマークが入った渋いやつだ。
たぶんおばあちゃんの旦那さんが存命だった頃のものだろうから年代物の貴重なやつっぽいけれど、ビニール袋に入ったままホコリを被っていたので使って構わないだろうと判断した。
おばあちゃんにあとで報告して怒られたら仕方ない、そのときはその時。
今日の四人の格好はBBQということもあって汚れとか匂いがついてしまっても気にならに結構ラフかつ若干よれている服装だった。その上、やっぱり暑くて女の子二人は作業用の麦わら帽子、鉄平はさっきの農○帽子で僕も暑くてタオルを頭に巻いた状態になってしまった。
草刈りでも始めそうな格好にゆかりが「高校生の男女が集まって遊んでいる格好に見えないよ」と笑い、瑞穂は「じゃあ、折角だから記念写真撮ろうよ」とはしゃぐ。
いくら僕が昔から知っているゆかりと鉄平とは言え瑞穂と遊ぶのは今日が初めてだから、クラスの陽キャの極と陰キャの極でうまくいくか若干心配したけど杞憂だったようだ。ここのところ学校でもよく話をするようになってきていたし、心配することもなかったかな。瑞穂も元々は明るい娘だと思うからね。今までの環境が悪すぎたためにあんな暗い状態だっただけだもの。
これからは今までの嫌な思いを塗りつぶす勢いで楽しんでいってもらいたい。もちろんその隣には僕もいるからね。
「お? 貴匡。炭焼のサバ美味いな」
「だろ? グリルで焼くのとはまた違うだろ?」
「秋刀魚が燃えてる、燃えてる~ あははは!」
「ゆかりん! 遊んでいないでひっくり返してよ~」
「ステーキ。ウマウマ」
「そうだろう。一手間掛けるとそれほど固くないし美味いんだよ」
お腹もいっぱいになり涼しい風も吹き始めたのでBBQは終わりにして片付けることにした。焼きながらもゴミなどは片していたので、火の始末さえやればほぼ終わりだったので、かなり早めに撤収出来た。BBQコンロの汚れ落としは明日にでも僕がやればいいので、庭の隅に片付けて置いておくことにした。
「いいのか? 任せちゃって?」
「いいって。洗って乾かして物置に収納するだけだから手間でもないよ」
こういうところに気が利くから余計に鉄平はモテるのだろうな。
顔がいいだけじゃなくて中身もいいなんて女の子は放っておかないよな。
でも、鉄平には彼女がいないのだよね。何でだろう? 今度聞いてみようかな。
十六時過ぎ。
リビングにてみんなでのんびりお茶を飲む。大騒ぎした後の余韻に浸りながらマッタリするこの時間も結構いいものだな。
「ねえ、二人はこの後瑞穂ちゃんのベッドを組み立てるのでしょう?」
「そうだな。もう少し休んだら始めようか? 鉄平もそれでいい?」
「おう。いいぞ」
「悪いな」
「じゃあ、瑞穂ちゃんと私は何しようか? 夕飯の支度には早いというかまだお腹空かないでしょ? 夕飯は八時頃でいいかな?」
「ん? ゆかり。八時じゃ帰りが遅くならないか?」
八時すぎるとバスの運航便も極端に減るはずだぞ。
「え? 何を言っているのかな、貴匡。私、今日はお泊まりだよ?」
「え?」
「え?」
「瑞穂、ゆかりが泊まるって聞いていた?」
「ううん。今知ったよ、貴匡くん。ゆかりん、どういうことかな?」
「あれ? そういう話じゃなかったっけ? お泊りセット持ってきているんだけど」
すっとぼけているけど、自分で勝手に決めておいて許可をこっちにもらうのを忘れていたって顔だな、あれは。
「だめ、かな? 貴匡、瑞穂ちゃん」
「いや、僕は構わないけど……」
「私もいいよ。お泊まり楽しいもんね」
「ずるいよ。じゃあ、俺も泊まるよ」
「鉄平は着替えとか持ってきてないだろ?」
「俺はこのままでいいよ」
「やめろよ。匂いが布団につく。はあ、僕の服を貸すからそれを着て。じゃあもう分かったから。鉄平も泊まるんだね?」
先に言っておいてくれたならお客様用の布団を干しておいたのに……仕方ない。布団乾燥機順番で使ってふんわりさせておこう。
僕と鉄平は僕の部屋に、瑞穂とゆかりはこれから作るベッドで寝てもらおう。
「じゃあ、僕は布団の用意とベッドの組立を始めるよ。鉄平もいい?」
「OK! お手数おかけしますが、よろしくです~」
「私とゆかりんはその間にお風呂に一緒に入っちゃおうか? うちのお風呂広いから二人でも余裕で入れちゃうんだよ!」
「へ~ いいね。入ろう、入ろう。いつもは瑞穂ちゃんと貴匡が二人で入っているんだね」
「そうだね!」
「……そ、そうなんだ。やだ、ラブラブ。温まりそうなお風呂だね」
「瑞穂……そんな初歩的な引掛けにやられないでよ」
「あっ、はっ‼ うううう」
風呂にも入っていないのにのぼせたような真っ赤な瑞穂が出来上がっていた。
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