第41話

 おばあちゃんが家出しても僕らは学校は普通に登校することにした。


 当然といえば当然。僕的にはおばあちゃんは大家さんなだけであくまでも他人なのだから、心配であろうと学校を休んだりは出来ない。瑞穂は休んでもいいのだろうけれど、休んだところで何かが好転するわけでもないのでやっぱり普通に登校する。

 というか、純生さんから聞いた昨日の話しぶりじゃ元気に遊び回っているだけのようだから心配する必要さえないらしい。


 瑞穂と二人だけの生活が始まった。ラノベの同棲モノみたいでワクテカしてしまう。

 食事は基本瑞穂に任せきりになるので、洗濯やその他の雑用を僕が担当する。

 ただ、朝は時間がぜんぜん足りないので、洗濯や掃除は帰宅後にしようと思う。


「今日の帰りに部屋干し用洗剤を買ってこよう。今の瑞穂の部屋をベッドルームじゃなく、洗濯物干し部屋にしてしまおうと思うんだけどいいかな?」


「日当たりを考えるとそうした方がいいよね。ベッドルームは北側でも問題ないものね。お日様の光を浴びながらがいいって貴匡くんが言わない限りは構わないわよ」

 太陽光浴びながら何をしようって話なのかな? 因みに僕は薄暗いのがいいと思う。


 今の僕の部屋を二人の部屋にして、北側の使っていない部屋をベッドルームにすることに決めた。高校生の分際で二人の寝室がどうこう言っている時点でかなり阿呆だとは思う。


 おばあちゃんが帰ってきて、あれこれ文句言われたらその時に直せばいいや。おばあちゃんだって家出しているくらいだし、多少のことは目を瞑ってもらわないとな。僕たちのしている行為が多少のことかどうかはまた別の話だ。




 学校ではあくまでも普通に過ごす。GW前なのでみんなソワソワと遊びの計画を立てているようだけど元々ボッチ同士の僕と瑞穂にはそんな誘いすら来た試しがない。

 あ、ゆかりからはしつこくあったけど、アレはノーカンだ。全部断っていたし。


 瑞穂とボソボソと話しているとゆかりが鉄平と一緒にくる。


「貴匡はGWの予定はどうなっているの?」

「瑞穂と一緒に買物と部屋の模様替えかな」


「ふふふ。模様替えって二人の愛の巣を作るのかな?」

「……ま、まあ」


「いやだ、いやらしい。本当に二人で一つの部屋にするのね。ねえ、そうなの瑞穂?」

「う、うん。ゆかりん、学校であまりその話をしないで……恥ずかしいよ」


 鉄平は話が全く見えずに口をぽかんと開けたまま僕たちの会話を眺めていた。


「な、なあ、貴匡にゆかり、ソレに平林さん。君たちは何の話をしているのだい?」


「鉄平、気にしたら負けだから気にしないでいいわよ」

「新道くん。そういうことでよろしくお願いいたします」


「よくわからんねぇけど後でちゃんと教えろよ」



 ゆかりと鉄平が何故かGWに我が家に来ることになった。

 放課後誰も居なくなったところで瑞穂と僕が一緒に住んでいることを鉄平に教えてやった。その話を引き継いだのがゆかりで、話さなくてもいいことをべらべらと話し、GWは僕たちの愛の巣を作るのをゆかりと鉄平が手伝うということになった。なってしまった。もの凄く恥ずかしいし、余計なお世話感が半端ない。

 でも瑞穂がいいって言ってしまったので今更断れない。


 全く友達というものに恵まれなかった瑞穂にとって初めていと言っていいくらいの友達がゆかりなのだから、友情を全面に出されると瑞穂は弱かった。

 僕的には非常に微妙な感情はあるけれど、許すことにした。当然ながら鉄平はおまけのようなものだけど。



 GW前半はおばあちゃんが居なくなったせいでやらなければならない純生さんとの打ち合わせやら買い物で潰れた。

 家具屋のシマチョウにベッドのフレームも見に行ったけど、丁度いいものがなかったので結局ネットで購入してしまった。

 ベッドのフレームはGW後半初日に届くというのだから具合が良かった。


「ねえ貴匡くん。お二人に手伝ってもらったらすぐ模様替えも終わるよね。その後はどうするの?」

「そうしたら、定番のBBQでもまたやろうか?」


「この前の河原までいくの?」

「いや、GW中のあそこは混んでいるだろうから、庭か物置の向こう側の空き地でいいんじゃないかな?」


「空き地を勝手に使ったら怒られるよ!」

「へ? 瑞穂は知らなかったの?」


「何を?」

「そっちの物置の向こうの空き地と空き地の向こう側の畑までおばあちゃんちの土地だよ」


「本当に?」

「本当だよ。なんなら、他の場所にもいくつか土地と建物を所有しているから! それらを貸しているからおばあちゃんは長期旅行のような家出が出来るほど余裕な暮らしをしているんだよ」


 いくら金銭的余裕があっても家出生活をエンジョイするのはどうかと思うけどな。


 ふとスマホを見てみると着信ランプが点滅している。僕にもおばあちゃんから写真付きのメールが届いていた。

『瑞穂をよろしくね』と言うメッセージに添付された写真の背景は南国だった。というか名護パイナップルパークって記念写真看板と一緒におばあちゃんは写っていた。

 満面の笑みを浮かべるおばあちゃん……家出の行き先が沖縄なんだね。元気そうで何よりです……




「当日の天候次第でどこでBBQやるか決めよう。どうせ大した距離じゃないし当日で十分だろ? 庭は近いけど空き地の方には東屋があって多少の雨もしのげるんだぞ」


「東屋ってもうただの空き地じゃないね。そうだね。じゃあ、当日はゆかりんと私で買い物してくるから、新道くんと貴匡くんでベッドを作ってもらっていいかな?」


「ああ、うん」

「え? なにか嫌なの?」


「ううん。鉄平に僕たちのベッド組立を手伝わすとあれこれ言われるんだろうなって……でも、どの道言われるなら一緒か」


「友達とBBQとか夢みたいだよ。貴匡くんとのBBQも楽しかったけど、これはこれで楽しそうだね。ほんと貴匡くんに感謝です」


「そう言ってもらうと僕も嬉しいな。僕も友達と一緒に遊ぶなんて前回が何時だったか思い出せないくらい久しぶりだよ」


「「二人して悲しいねぇ~」」


「でもこれからは違ってくるんだよね!」


 少しずつ変えて、変わっていこうと思った。すでに僕たち二人は出逢う前と後ではだいぶ変わったと思う。付き合うようになってからの加速度はヤバいと思う。

 歯車がガチっと合うって感じなのかな?



 GW前半は忙しすぎて瑞穂とイチャイチャする時間が少なかった。疲れ過ぎで夜もあっという間に寝てしまったしね。


「ねえ、二人きりよ? 今日は久しぶりに……」

「ここのところずっと二人きりだけど? あと久しぶりというほど日は空いていないと思うけど? 」


「……嫌なの?」


「え? いや、あ、明日学校あるけど?」

「……だから?」


「無問題! いただきます」

「ふふっ、たぁんと召し上がって!」


 結構おとなしめだった瑞穂が夜には豹変する件について……

 僕たちは、とある身体の場所同士がガチっと合うんだろうな。



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