第33話

くっそ忙しいよぉ~~~

遅れてすみません。今後も遅れます…ごめんなさい

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「「ただいまぁ」」

 かすみ荘に帰ってきたけど玄関扉は施錠されている。


「あれ? おばあちゃんは寝ているのかな?」

「もう夕方だし、もし寝ていたら起こしてあげないと夜また眠れなくなるかもだから、瑞穂はおばあちゃんの部屋行って見てきて。僕はBBQセット物置に仕舞ってくるよ」


 食べ残しの食材や飲料を瑞穂に預けてBBQセットを仕舞いに庭の隅に置いてある物置にアウトドアカートを引いてくる。


 物置にBBQセットを仕舞っていると、瑞穂が慌てた様子で駆け寄ってくる。


「た、貴匡くん! 大変!」

「ど、どうしたの!? おばあちゃんに何かあったの?」


「おばあちゃん――居ないの」

「は?」


「だから、おばあちゃんが居ないの。部屋に帰宅した様子も見受けられないから昨日からずっと帰ってきていないみたい」

「…………」


 あの不良ばあちゃん、丸一日以上遊びに行って帰ってこないとか何やっているんだか。


「富田さんちにまだ居るのかな?」

「流石に迷惑じゃないかな?」


 ちょっと孫として、帰ってくるようにおばあちゃんに言ってくると瑞穂は裏の富田さんのお宅に行ってしまった。


 僕は洗濯物、僕のベッドのシーツやら何やらを取り込んだり、BBQで余った食材を仕舞ったりして瑞穂とおばあちゃんが帰ってくるのを待った。


「そうだ。風呂もちょっと早いけど沸かしちゃおう。身体中が油と煙の匂いで結構臭いもんな」




 暫くして瑞穂が帰ってきたけどおばあちゃんの姿がない。


「あれ、おばあちゃんはどうしたの?」

「おばあちゃんは今朝、富田さんちに一晩泊まって帰ったって。だから、現在行方不明なの」


 行方不明って? 防災無線で告知されちゃうやつ?


「瑞穂はおばあちゃんがどこ行ったか心当たりある?」

「ない」


 もう一度部屋に行って見るがおばあちゃんはやっぱり居ない。もしかしたらと、脱衣所の洗濯物入れを見るとおばあちゃんが昨日着ていた服が放り込まれていた。


「おばあちゃんは一度帰ってきて着替えてまた出かけたようだな」

「はあ、おばあちゃん元気すぎだね。えっと、おばあちゃんはケータイ持っていたよね。私が電話かけてみるね」


 瑞穂はリビングに置いてある家の電話からおばあちゃんに電話する。自分のスマホを使わないところはしっかりものだと僕は思うぞ。



「繋がった?」

「うん。元気そうだった……小笠原さんってお宅に居るみたいなんだけど貴匡くんは知ってる?」


「いや、おばあちゃんの交友関係全部知っているわけじゃないからね。それで帰ってくるって言ってた?」

「ううん。今日もお泊りしていくから純生すみお伯父おじさんに明日は休むって伝えておいてって」


 ああ。明日のリハビリに行きたくないから注意する僕らが居ないことをこれ幸いに逃げたな、おばあちゃん。

 しょうがないので後は純生さんに伝えてアッチで対応してもらおう。




「じゃあ、瑞穂。お風呂沸いたから先に入っていいよ」

「……貴匡くん」


「なに?」

「そこは……お風呂沸いたから一緒に入ろう、じゃないかしら?」


「え? まだ明るいよ?」

「明るいと、何なの?」


「いや……」


 ちょっと圧が凄いんですけど、瑞穂的に僕と一緒の入浴でいいんでしょうか?


 ――むしろソッチのほうがいい、と。昨日既に一緒に入ったからもう大丈夫。何ならこれから毎日一緒に入りたいんですね。


 え~っと、もう一度。本当にいいんですか?


 ――いいんですね。


 僕、いろいろ変わっちゃうかもしれませんよ?


「そ、それは……ウェルカムとでも言っておこうかな? かな?」


 初めて合った頃は、と言っても数週間前だけど、一緒にお風呂入るとか言ったら、『………ごめんなさい』と言っていたのに変われば変わるものだよな。瑞穂も僕も。

 今も瑞穂は顔真っ赤だけどね。言っている僕も顔がものすごく熱いし汗だくだく。


「も、もう。貴匡くん、そんなに汗かいちゃって。お、お風呂に入りましょう、ね」

『ね』だけ少し遅れて上目遣いで言われちゃったら、僕はもう一撃ノックダウンです、はい。


 リードしなきゃな場面だけど、またもや瑞穂に手を引かれて脱衣所に入る。


「あ、あの。お洋服脱ぐときはちょっと恥ずかしいので、貴匡くんは先にお風呂に入っていてくれる? 後から直ぐ私も入るから」

「うん」


 一旦、瑞穂は脱衣所から出たので急いで僕は服を脱いでしまい、浴室に入ってから瑞穂に声をかけた。


 浴室の扉の向こうで衣擦れの音がして磨りガラスにぼやけた瑞穂の肌色が見えた。


 昨日も一緒にお風呂に入ったというのに――それより凄いこともシタというのに僕はまたしてもドキドキしてしまい、扉に背を向けて浴室の椅子に腰掛けた。


 カラカラと扉が開けられ、瑞穂が入ってくる気配を感じる。


「どうしたの貴匡くん。こっちを向いて」

「ご、ごめん。恥ずかしくって」


「もう、私も恥ずかしいから一緒だよ」

「はは。ごめん」


 瑞穂は昨日と同じ様に僕の身体を洗ってくれた。昨日ほど劣情に身を任せた感じではなく優しくかつ愛おしそうに僕の身体の隅々まで洗ってくれる。


 今度は代わりに僕も瑞穂の身体を洗ってあげる。


 瑞穂の身体の触れる箇所が変わる度に『ここ触ってもいい?』って聞いていたら『貴匡くんなら私のどこでも触って構わないんだよ』と若干キレ気味に叱られたので絶賛触りまくりの洗いまくり中である。もう、いいって言ったんだから知らないよ。


「はぁはぁ、貴匡くんのばかぁ」


 湯船にもまだ入っていないのに身体を火照らせ、のぼせたような表情になっている瑞穂。

 そういう僕も既にのぼせている。


「貴匡くん……もう出ようよぉ~ お部屋行こうよぉ」

「折角お湯張ったのに?」


「やだやだ。上行くのぉ~」

 昨日と同じパターンだけど可愛いので許す。上へ移行。


 湯船には後でもう一度沸かし直して入ればいいし、夕飯もBBQの残り物で十分だ。




 お肉食べて瑞穂いただいて二つの肉欲を満足させた良い一日だった。

 僕も大概だな、ははは。

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