第30話

 チュンチュン


 外はもうすっかり明るくなってきている時刻。


(今何時だろう?)


 瑞穂が僕にしがみつくように抱きついて寝ているので時計を確認できない。

 日の出が五時頃だったと思うから、六時は過ぎているかな?


「瑞穂……起きて」

「うふふ、貴匡くん……しゅき」


 一度起こそうかとほっぺを突くとそんな寝言を言う。


「くっそ、むちゃんこ可愛いじゃないかよ」


 このままくっついて寝続けたいところだけど、おばあちゃんが帰ってくる、帰ってきているかもしれないからちゃんと起きておかないといろいろと面倒そうだ。


 仕方ないので、もう少し強めの起こし方をしてみる。僕の片腕は腕枕を一晩していたせいか痺れて感覚がない。反対側の手を使い、瑞穂の肩を揺らして無理やり起こしてみよう。


 瑞穂に声をかけながら起こそうと腕を伸ばしたところ、不意に瑞穂は寝返りをうってしまい、身体が上向きになる。彼女の方をつかもうと僕の伸ばした腕はそのまま昨夜たっぷり堪能した瑞穂の柔らかく豊かなおっぱいを鷲掴みにしてしまう。


 瞬間。目を覚ます瑞穂……


「おはよ。貴匡くんってば、ダイタン♥ 朝からしたくなっちゃったの?」

「いや、いや、そうじゃなくて。起こそうとして丁度タイミングが……」


「うふふ、冗談よ。おはよう貴匡くん。うふふ――」

 そう言って軽くキスをしてくる。


 瑞穂はなんだか一晩で大人な女になっている気がする。


「――うふふ……えへへへ…たかまちゃくん、ちゅき、もっとちゅ~しよう」

 前言撤回。甘えん坊ぶりが激しく増していた。うん、どっちも可愛い瑞穂なので無問題。


 やっと時計を見る事ができて、今は予想通りの六時一二分。階下には音を立てるものはなくおばあちゃんもやっぱり帰宅していない模様。昨夜の時点でシリーズ3を見ると言っていたから多分見ていたとしたら時間的にまだ寝ていると思うな。真逆と思うけど4と5も一気に見なかっただろうな? 徹夜は流石におばあちゃんにはきついはずだからそれはなさそう。


 僕が何故いま、こんな余計なことを考えているかって? そりゃ、一糸まとわない状態で若い男女が抱き合っているのだから、いくら朝っぱらだからって、モヨオスものは催してしまうからです。


 しかも、瑞穂は超可愛く甘えてきているものだから、もう我慢の限界がまたもや、やってき……


「あっ……はぅ」

「貴匡くんの、おっきくなっているよ? 私も、ほら……」

 僕の手を取ると瑞穂は自身にそっと導いて――――はいっ我慢糸冬レノおわり








 別々にシャワーを浴びて、朝ごはんの用意。と言っても僕は大して何も出来ないのでトーストを用意するだけ。あとのおかずは全部瑞穂に任せきり。


「僕も料理ができるようになれば世話を掛けることもないから、今まで以上に勉強するな」


「ううん。貴匡くんは何もしなくていいよ。私に全部やらせて? 貴匡くんがあれこれできるようになってしまうと私が用済みになってしまう気がして落ち着かないの」


 絶対に用済みになるとかそんな事は起きないんだけど、独りには戻りたくないっていう不安から来ていることなので、無理して僕も家事はやらないことにする。勿論やらせっぱなしなど言語道断なのでちゃんと手伝いはするつもり。


「ねえ、おばあちゃんはいつ帰ってくると思う?」

「さあ、昨日映画はどこまで見たのだか分からないけど、もしかしたら見終わるまで帰ってこなかったりしてね」


 別に一気鑑賞しなくてもいいのにね、なんて言いながら二人で笑い合って朝の時間を過ごす。愛しい人と過ごす何気ない時間や会話がこんなにも素晴らしいなんて思わなかったな。


「そんなことさえ瑞穂のことを好きになるまで気づかなかったんだなって思う」

「私も、独りじゃないって気持ちがあるだけで今までの暗い気持ちが晴れていくようだわ」


 食器の洗い物と、ベッドのシーツやあれこれの洗濯、ゴミ箱の中身の処分などを手分けして作業して、十一時前には全てキレイな状態に戻した。


「貴匡くん、おばあちゃんは結局帰ってきてないけど、今日は何をする予定?」

「昨日のデートはお互いに勘違いしてなし崩しになっちゃったから、昨日の続きを――って言っても今更ショッピングモールに用事はないから、スーパーでお肉買ってきてBBQでも河原でやらない?」


「BBQは良いけど河原? 道具とかはあるの?」

「ああ、そうか。瑞穂はかすみ荘に来てまだ日が浅いから知らないのか?」


 かすみ荘から僕らの高校とは反対側の方角に二キロメートル弱ぐらい行ったところに小さな河川が流れているんだけど、その河川敷がBBQ場として開放されている。

 BBQをやっている人は少ないのでそこそこ穴場だ。と言っても僕もずっとボッチだったからBBQはあの場所でやったことはない。因みに道具は過去のかすみ荘住人が丈夫で良い物を残していってくれているのを確認している。かすみ荘の庭先でおばあちゃんと寂しく少しの肉とサバを焼いて確かめたので間違いはない。サバ、うまかった。


「それじゃ、お肉とか焼くものを買えば直ぐにBBQできるの? わーい、私BBQってやった記憶ないからすごく嬉しい!」


 BBQをやったことがない、それもまた悲しいけど僕たちで楽しい思い出を作っていけば良いのだからこれからはもう悲しむ必要は無いだろう。


「それじゃ、汚れたり匂いがついてもいいそうな、それでいてで出かけるとしようか?」


「ねえねえ、その恥ずかしくない服装って態々言う必要ってあるの?」


「あ~、まぁ、ね。前科あるから、やっぱり、ね」


「もうあの変なキャラクターのトレーナーは捨てましたし、チェックのスカートも捨てました。安物ですけど無地の地味服を買ってあるからそれを着ます。文句ないでしょ!?」




 スーパーマーケットで飲み物やお肉セットと家にあった野菜などをいくつか袋に入れて、僕らは物置から出したアウトドアカートにBBQ道具を乗せて河川敷を目指した。




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寒いと温かいもの欲しくなりますよね?

私は寒いので★が欲しくなります……

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