第26話

 章分けしていませんが、二章が始まったものみたいな感じでよろしくおねがいします。


>>>>>




「……瑞穂」

「ん?」


「すごく身も蓋もない質問していい?」

「……いいよ」


「あのさ、この状態から僕らはどうすればいいのかな?」

「うん。私もそれは思ってた。貴匡くんはどうしたい?」


「欲を言えば、このままずっと瑞穂と抱き合っていたい。けど、そんな訳いかないじゃない? そこで、言い方はおかしいけど、丁度いい切り上げ方とでも言うのかな。どうすればいいのかな? と思って」


 そうなんだ。気持ちがものすごく盛り上がって二人で抱きしめあったのだけど、時間が経つと少し冷静になる部分が出てきて、離れるタイミングを知らない僕らはにっちもさっちも動けなくなっていたんだ。


「じゃ、じゃあ。せいのっで腕を広げていよっか」

「そうだね。じゃ、せいのっ」


 パッと抱きしめていた腕を同時に離して腕を開放した。


 離れたら離れたで、今まで僕の胸にくっついていて見えなかった瑞穂の顔が見られて、またもや恥ずかしくなって顔が熱るのが分かる。

 瑞穂も頬を染めていて、それがまたすごく可愛らしくて再度抱きしめたくなるが、キリが無くなりそうなのでグッと我慢する。


 今はソファーに隣り合いくっついて座っているけど瑞穂から目線が外せなくってずっと僕らは見つめ合っている。


「た、貴匡くん。さっきの本当だよね?」

「? さっきのって?」


「あの、その……好きっていうの、私のこと」

「うん。僕は瑞穂が好き。大好き」


「うへへ。そんなに何回も……嬉しいけど、恥ずかしいね。でも私でいいの?」

「瑞穂がいい、瑞穂でなくては嫌だよ。なんでそんなこと聞くのさ」


「だって、貴匡くんにはゆかりさんて幼馴染さんがいるじゃない。一旦はお付き合いをしないことにしたって聞いても、ゆかりさんの行動を見ると不安なんだもん」


「そうか。でも僕はすでにゆかりのことはただの幼馴染で友だちとしか思っていないんだよ。それは瑞穂に出会う前からだから、瑞穂は心配することは無いよ」


「で、でも。ゆかりさんの方は貴匡のことどう思っているかわからないし……ふぁ、ファーストキスの相手だもん。心配なんだもん」

「僕には何があったとしても瑞穂しか見えないよ。どうしたら瑞穂の不安は消えてくれるんだ?」


「……ん」

 瑞穂は見つめていた瞳を閉じて少しだけ顎を上げた。


「え~っと……」

「ん~ん~」


 瑞穂は頬を赤に染めて目を閉じて待っている。

 僕は熱い瑞穂の頬に手を添え、その唇に僕の唇を重ねた。


 ほんの触れるだけのついばむようなキス。

 瑞穂はまぶたを開け、じっと見つめ返してくる。


「ゆかりさんともこんなのだったの?」

「うん。こんなのだったと思う」


「っじゃ、私は……こうっ」

 そう言うと瑞穂は僕の首に腕を回してきて、再び唇を重ねてきた。


 さっきよりも強く押し付けて、そしてねぶるように僕の唇を蹂躙してくる。

「……どう?」


 瑞穂はさっきよりも更に真っ赤に上気させた表情で聞いてくる。


「どうって……止められなくなりそうだし、その先に行っちゃいそうだから自制心がきついよ」

「……その先? それは貴匡くんも初めてなんだよね?」


「も、もちろんだけど。きょ、今日は駄目だぞ」

 瑞穂は半分僕の上に伸し掛かるような体勢で迫ってくる。


「なんで? 私じゃ駄目なの?」

「そんなこと無いし、そうなりたいと思っているけど。今日の今日は駄目だよ、落ち着いて!」


 暴走気味の瑞穂を僕は半分寝転んだような体勢でまた抱きしめた。そのまま、瑞穂の頭をゆっくりと撫で、背中をトントン叩いて落ち着くように促した。



 暫く抱きしめていると、瑞穂は落ち着いてきたようで呼吸も普通に戻ってきた。


「ごめんなさい。私……すごくはしたない真似してしまいまいました」

「ううん。大丈夫だよ。全く気にすることじゃないよ。僕だって瑞穂がいいと言うなら最後まで行っちゃいたいって思うもの」


 身体を起こすと、瑞穂と見つめ合う。


 瑞穂は涙を流していた。


「ごめんなさい。私、怖くって……こんなに貴匡くんのこと大好きになったのに、まだ始まったばかりなのに、もし貴匡くんを失ったらなんてことが頭をよぎって。また一人ぼっちには戻りたくないって……」


 瑞穂の涙を拭ってあげながら、優しく唇を重ねた。


「さっきも言ったけど、大丈夫だよ。僕はどこにもいかないし、僕だってまたボッチにはなりたくはないからね。別に慌てて身体を重ねなくても、僕は瑞穂のことが大好きだしすごく大事に思っているよ」


「ありがとう、大好き」




 抱きしめあったままイチャイチャちゅっちゅしていたらいつの間にか日が落ちていて部屋が暗くなっていた。


 く~


「き、聞こえちゃった?」

「おなか空いたね。今日の夕ご飯はなにかな?」


 何時間こうしていたのか分からないけど、おなかの虫が騒ぎ始めるくらいはずっとくっついていたみたいだ。最初抱き合ったときは離れるタイミングがどうこう考えていたのにたった数時間で慣れたものだ。ゆっくりと身体を離し、そのまま自然に手を繋いで台所まで行った。家の中で手を繋いでいるなんておかしいって? いいじゃないか! 離れがたいんだよ!


「そういえば、おばあちゃんはまだ富田さんちから帰ってこないんだね」

「ああ、そうだ。おばあちゃんは富田さんちに行ってダーティハリー五本一気に見てくるから夕飯はいらないって言っていたよ」


 明るいうちに出ていったけど、まだ見ているのかな? ダーティハリー。


「ダーティハリー? なんですか、それ?」

「ん? 昔の映画で44マグナムをぶっ放して……なんか凄い刑事の物語らしいよ」


「?」

「?」




 夕飯は瑞穂と一緒に作ることにした。

 何も出来ない僕でも何らかは手伝うことが出来そうということで、オムライスに挑戦することにした。


 ……のだけれど、玉ねぎを切る初段階で硫化アリルのせいで号泣、人参の皮むきするのにピーラーを使って力の入れすぎでピーラーを破壊。卵を割れば殻まで粉々にして殻まみれの溶き卵にしてしまう有様……


「貴匡くんは、隣で見ていてくださいね。それが一番のお手伝いだと思うな」

「…………はい」




「美味いなぁ~ やっぱり瑞穂は料理が上手だよね」

「今日は二人で作ったからより一層美味しく出来たんだよね」


「僕は邪魔しかしてなかったけどなぁ」

「隣で愛情振りまいてくれたから美味しくなったんだよ」


 二人であ~んって食べさせっこしながら完食。

 誰もバカップルって揶揄ってくる奴がいないから思いっきりバカップルをやってみた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る