第13話

 学校に着くと、昨日と同じような視線を感じた。なんとなく良くない視線に感じたので、適当な理由付けて瑞穂とは離れて教室に入った。

 その頃にはその視線も感じなくなったので、気のせいかとも思うけど昨日のゆかりの話もあるし用心には越したことはないと思う。




 そのまま数日が過ぎ、今日は金曜日。僕のお弁当は瑞穂が作ってくれたので、当然瑞穂のお弁当と中身が全て同じ内容。見た目も全て同じものを並んで食べるわけにもいかず、以前のように校舎の陰にあるベンチで僕はお弁当を食べていた。


 食べ終わった弁当箱を片付け、スマホを取り出しウェブ小説でも見ようかと思っていると、目の前にガラの悪そうな男子が三人立ちはだかる。


「お前か? 水島をだまして面倒を見させていながら他の女にも手を出しているって奴は?」


「ゆかりを騙す? 何のことだ?」


「なんだとぉ? しらばっくれてんじゃねぇぞ‼ 親がいないことに同情させて騙してんのはみんな分かってんだからな」


「……」


 これか。あの嫌な視線の正体は。なんともバカらしいけど、とりあえず瑞穂とは関係が無くて良かった。


「何を黙ってるんだよ。俺たちのいうことが正論すぎて返答も出来ないんだろ?」


「ふぅ、やれやれ。お前らみたいなウスノロは状況もな~んにも分かってないうえ、群れて低能な脅し文句しか言えないんだな。まったく辟易へきえきするな」


「何を‼ ぶっ殺してやる!」


 ちょっと煽っただけで三人のうち、リーダーっぽい奴が僕に殴りかかってきた。避けることも出来たけど、えて避けずにそいつの拳を頬に受ける。それを合図に残りの二人も襲いかかってきたので、そいつらにも何発かここらが頃合いとみて僕も反撃に移る。



 多分、やり始めて十分も経っていないと思うけど、襲ってきた三人は僕の足元で蹲って唸っているだけで、逃げることさえ出来ないようだ。本当に口ばかりで弱い奴らだった。


「お~ 貴匡ぁ~ もう終わっちゃったのかい? 折角助太刀に来たのに俺は用無しじゃ寂しいじゃん」


 徹平が助太刀とか言いながらテクテクのんびりと歩いてくる。


「なにが助太刀だよ。ん? 今の撮っていたのか?」


 徹平の手にはスマホが掲げられていて、今の騒動をこっそりと録画していたようだ。



 徹平はそのまま襲ってきた三人のところでしゃがみ声をかける。


「お前らが襲っているところはバッチリ撮っているし、貴匡の正当防衛も証明できるんだよね。このまま大人しくするなら俺からは何もしないけど、余計なことしたら出るとこ出るから覚悟しておけよ」


 正当防衛っていうか、ここまでやったら絶対に過剰防衛だと思うけどコイツ等じゃ理解できないだろうからもう、それでいいだろう。


「サンキュ、徹平。そいじゃ、教室に戻ろうか?」




 教室に戻ると何かを察したのかゆかりが駆け寄ってきて僕の頬を指差し泣き出したりと非常にめんどくさい事になった。


「転んだだけだって!」

「そんな訳ない! どうしたの? 誰にやられたの?」


 心配してくれる気持ちは嬉しいが、過剰すぎて本当に困る。ここも徹平が上手く収めてくれて、ゆかりを遠くに離してくれた。来週、徹平には購買のプリンを奢ってやろう。



 放課後。

 学校から少し離れた場所で瑞穂と待ち合わせ。


 瑞穂に渡したスマホにSimカードを入れたので、メッセージのやり取りが出来るようになり、待ち合わせなどという高度なことがボッチ同士の僕たち二人に出来るようになっていた。

 因みに女の子と待ち合わせなんて僕は瑞穂とが初めてだった。ゆかりのときはゆかりんちに行くかウチにゆかりが来るかだったから待ち合わせなどしたことがなかったから。


 瑞穂は住宅街の一角にある公園なんだか空き地なんだか判断がつかないようなやたらと狭い土地に設置してあるベンチで待っていてくれた。


「おまたせ。ちょっと遅くなってごめんな」

「……」


「あれ、瑞穂? ごめん、なんか怒ってる?」

 コクンと頷きベンチから見上げてくる。


「今日の昼、何があったのか話してよね。あと、貴匡くんまだ絶対何か隠しているわよね? 全部話しなさいよ」


 なんなのこの娘。ホント鋭すぎて本当にボッチだったのか疑いたくなる。


「いや、何のことかな? 分からないけ……ど……はい、降参」


 僕は両手を上に上げて、瑞穂に参ったと早々に降参を表明した。ちょっと誤魔化そうと思ったけど視線に剣呑さが増したので諦めました。



 帰宅の道すがら、今回の顛末を瑞穂に話す。


「と、いうことで簡単にまとめめるとゆかりのファン(笑)三人が、校舎の陰で僕のことをシメようとしてきたけど返り討ちにして、その一部始終を徹平に録画されていてぐうの音もでなくしてやった、と言う顛末になります」


「じゃあ、いつか教室で新道くんが言っていたことがそのまま現実になったということなのかな?」


「まあ、そうだね。徹平は未来が見えるエスパーか何かなのかな?」


 ものの試しに話を少し逸らしてみる。


「巫山戯ないで」

「はい。スミマセン」


 即轟沈……


「新道くんは貴匡くんと水島さんの周りのことをよく見ていて、その上で貴匡くんならどう行動するか先読みしただけでしょ?」


「そうともいいます」


「まったく。どうして先読みできたのかしら? あなたが返り討ちすることまでを知っているってどういうことかしら? 貴匡くんは、そんなに喧嘩に強そうには見えないんだけど、実際には三人相手に態と殴らせることまでできるほど何でもなかったってことでしょ? それを新道くんは知っている。どういうことかしら?」


 この娘本当になんでそういうところに次から次へと気づいていくんだろう?


 あ~ 僕の黒歴史。


 話したくないけど、話さないと終わんないんだろうなぁ……


 とほほ。



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お読みいただきありがとうございます。

是非とも評価のほどおねがいします。

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