第1話 拾ってもらった

「…い!…きろ!」


「うーん…?」


死んだはず…なぜ俺は意識を?


「意識があるぞ!」


「よかったよ…」


「…ふわぁぁぁ…」


「…おい、どうした?何があった?」


「ん…あなた達は?」


「そんなことよりとりあえず…立てるか?」


「あ…はい…」


俺、反応に困るんだけど。


「よっこいしょ…」


周りを見ると草原。そしてめっちゃ人に囲まれてる。…何があった。


「さて、質問は…俺たちは誰だ、だな?俺はギデオン。この傭兵団の団長だ」


ギデオン…体大きめ。


「私はリリカですよー!策士なのです♪」


リリカ…背が低め。


「俺はハイリン!傭兵団の弩弓部隊リーダーだぜ!」


ハイリン…メガネ。


「私はリュシアン…騎馬隊の隊長だ」


リュシアン…背が高め。一人称が私の割には男。


「私はヘリスですね。…まあ料理番と覚えてもらえれば!」


ヘリス…女の割には高身長、腕が強そう。


「…お前は?」


「俺は…高巻 龍」


「タカマキリュウ?…不思議な名前だな…」


…そう思えばそうかも。


「…リュウでいいかも」


「なるほど。ではリュウ、ここで気絶してたが、どうしたんだ?」


「確か…飛行機で…」


「ヒコウキ?」


「…すみません、ここってどこなんですか?」


「ここか?ここはカルガルマ地方だが」


カルガルマ地方…聞いたことがない。それに聞いたことがない名前…異世界…?んなわけないか。


「カルガルマ地方?」


「…リュウ、お前の故郷はどこだ?」


「どこ?日本ですけど…」


「ニホン?聞いたことがないな」


「…ではこちらから聞いてもよろしいでしょうか?」


「どうした」


「地球という星を知ってますか?」


「チキュウ?知らんな」


…信じたくはなかった。でも…俺は本当に異世界に来たらしい。本当は叫びたい。でも…この気持ちは心の中にそっとしまっておこう。


「…なるほど」


「ん?何か理解できたか?」


「僕は…あなたたちとは全く別の場所で産まれました。そして…あなたたちが地球という星、そして日本という国を知らない以上、ここが俺にとっては異世界と読み取ることができました」


「…なるほど。じゃあいる場所がないな?」


「はい…来てすぐなのでここのこととか全くわかりません」


「そうか。なら俺たちについてくるか?」


「…?いいんですか?」


「あぁ!困ってるやつは放っておけなくてな!」


「俺たちも歓迎する」


「私も歓迎しますよ〜♪」


…よくわからないけど、とにかくこの人たちについていけばいいんだな?


「さあ!皆!日はまだ登ったばかりだ!ラテノーヴまでもうすこしだ!」



「…そうだ、聞きたいことがあればなんでも聞いてくれ?」


「そうですね…なんで武器なんか持ってるんですか?」


「この地では…戦闘がよくある。というか戦争なんてたくさん起きるくらいだ。だが俺たちは傭兵団だ。だから、戦いに必須の武器を持ってるんだ」


「…どんな武器が?」


「俺の持っている大剣、ナイフ、リュシアンが持っている槍、ハイリンが持っている弓、撃砲。もっとあるが…俺たちはとある武器を目にしたことがない」


「とある武器?」


「そうだ。…なんでも宝石を操れるようになるらしい」


「宝石を…」


「そうだ。俺たち、結構資金難でな…そして今、さっき言ったラテノーヴ国で反乱が起きている。それを鎮めるために向かうんだ」


「なるほど…」


「あ、俺たちはもう仲間だ!別に呼び捨てとか敬語じゃなくてもいいんだぞ?」


「…わかった!」


「そうだ!それでいい!」


「そういえば…みんなって何歳?」


「俺は25歳だ」


ギデオン…25歳


「私は…20歳だ」


リュシアン…20歳


「俺は18歳だぜー!」


ハイリン…18歳


「私は12歳なのですー!」


リリカ…12歳…12歳!?


「私は17歳ですね」


ヘリス…17歳…理解した!しっかし12歳で策士…


「そうそう、ここに来たばかりのお前は…反乱とかの戦争には慣れてないはずだ。後方で、待機してた方がいい」


「…わかった」


「ならいい。…これからこの傭兵団で暮らすんだ。他の人と仲良くなっておいた方がいい」


「…なら話してくる!」


誰から話そうかなー?



一番近いヘリスさんに話しかけてみよっか!


「ヘリスさん!」


「ん、どうしたのかしら?」


「少しお話ししても…」


「えぇ!いいわよ!」


「ありがとうな!」


「あなた…確か異世界のチキュウという星のニホンという国からやってきたのね?」


「そうだな…」


「どんな料理があるか、教えてほしいわ!」


「えっ、逆にどんな料理がこっちでは…」


「えっと…私がよく作ってるのはおにぎりとか味噌汁…って言ってもわからないわね」


え、料理は日本と一緒なんだ…


「いや、それら作ってる」


「えっ!?」


「おにぎりとか味噌汁は日本でも作られてた」


「そう…なのね」


「あれ?じゃあさ、ニンジンがあったりジャガイモも…」


「えぇ、一番後ろの荷台にたくさん積んであるわよ?」


「おぉ…」


「あれ?リュウって料理は作れるのかしら?」


「まあある程度なら」


「本当かしら!?たまに手伝ってほしいわー!」


「もちろんだ!料理はたまにするなら楽しいからな!」


「資金難が終わったら普通にいいものを食べられるけどねぇ…リリカが資金の調整をしているから話してくるといいわ」


「はい!」


12歳の女の子が資金調整…怖い。


「リリカさーん!」


「はい!どうしたのですかー?」


「資金調整を行ってると聞いたけど…」


「はい!してますよー!」


「どんなふうに資金調整してるの?」


「このノートにまとめてるのです!」


…やべぇ、文字が…読めない…日本語じゃないんだ…


「…」


「…どうですか?」


「文字が読めない!」


「あっ、異世界人だったのです…なら教えますよ!この先、ここの世界で生きていくために必要だと!」


「…よろしく頼む!」


「任されたのです!それではレクチャー開始!なのですー!」



…簡単に言わせてもらおう。日本語、捨てろ。つまり超簡単だけど日本語とは案の定全く似てなかったからな!


「これでレクチャー、終わりなのです!お疲れ様なのですよー!」


「ありがとな!」


「皆ー!ラテノーヴに着くから準備してろー!」


「あっ、今から作戦会議なのです。リュウも来ますか?」


「うーん、一応見てみたいな…」


「よし!じゃあ来るといいのです!」


作戦会議…初めて見る。そりゃあそうだよね。



「よし、集まったな?」


作戦会議…空気が張り詰めてる…


「いいか?相手は臆病。そしてラテノーヴ市民でもある。だから…可能な限り殺さずに鎮めろ。そうすれば王からもらえる報酬も増える」


「王からそう聞いてるのか?」


「あぁ。事前に聞いておいた。ここからの作戦は…リリカ、頼めるか?」


「わかったのです。このラテナーヴ国の入口は正面、東入口、西入口の三つのみなのです。だから全軍を均一に分けるといいのです。…そうそう、リュシアン、偵察の結果はどうなのです?」


「…結構荒れていた。王が完全に悪者扱いになっている。何故だ?隣国からもかなり評判の国だが…ちなみに槍をよく使う。騎馬隊はあまり使わない方がいい」


「…なるほど。でも今回はあくまでも市民の鎮圧が目的。首謀者を探して、とっ捕まえるのがベストなのです。そうですね…一部隊およそ20人あたりに分かれて捜索するのです。今日は騎馬隊はお休み、突撃隊で行くといいのです」


「…突撃隊か…アイツは今用があっていないからな…」


「そうなのです。だから突撃隊の隊長を誰か代理でやってほしいのですが…」


「私が行こう」


「わかったのです。では最終確認なのです。今回の戦闘はあくまでも市民の鎮圧が目的。殺すことは最低限にするのです。そして一部隊20人程度で15部隊作り、5部隊ずつ分かれてそれぞれの入口から国内に侵入、首謀者を見つけたら束縛。という感じなのです。よろしいですか?」


「ありがとう。では、これでいこう」


リリカ…思った以上にすごい…これが12歳だと思うと怖くなってくるな。


「では5分後、侵入を開始する。各自準備を!」


…作戦会議ってこんなにあっさり終わるんだ…


「さて、リュウ、戻ってお話でもするのです!」


「は、はぁ…」



「そういえば…他の隊の隊長っているの?」


「突撃隊にジェネレート。偵察隊にアルフィム、魔術開発隊にベネデッドがいるのです!ちなみにベネデッドは私の姉なのですよ!」


へぇ、姉なんているんだ…


「姉は私と違ってかなり差が大きいのですよ?」


「そうなの?」


「はい。多分今だと…リュウくらいはあると思うのです」


「なるほど?ていうか魔術開発なんてできるんだね?異世界だから魔術くらいあるかとは思ってたけど」


「はい、戦闘でもバリバリ魔術は使われているのです。この戦闘でも魔術師がいるなら多分使われるのです。…まあこちらにも魔術攻撃隊もいますが!」


「なるほどね…あのさ、この世界のことについて説明してほしいな?」


「了解なのです!この地方の名前はカルガルマ地方といって、比較的国も多く、平原が多い地方です」


「じゃあ逆に危険な地方は?」


「ナイトメアなのです。ずっと夜。一応街灯はたくさんつけられていますが、あまり見えないので自然にできた落とし穴などに引っかかることがよくあるのです。さらにこの時期、ある者が暴れていて危険だとか」


「なるほど…」


「まあ武器を持たなくても私たちが守るのです!安心するのですよー!」


「…さすがに何もしないはアレだからな…」


もう慣れてるように見えてるけど隠してるだけでめっちゃ困惑してる。表に出したくないな。


「…さて、頃合なのです…リュウ、行くですよ?」


「え?」


「実はこの国に面白いものが隠されてるのですよ!…見に行ってみたいのですよー!」


「リリカ様、あそこですか?」


「そうなのです!」


「私たちもついていきましょう!」


あ、リリカさん直属の部下もいるんだ…


「いや、みんなはここを護衛しているのです。奪われたらたまったものではないのです」


「…わかりました。では、お気をつけて」


「…ではリュウ!これを持つのです!」


「これは?」


「簡単な地図と行くために必要なもの、護身用のボウガンと弾を詰めておいたのです!」


「あ、ありがとう…」


「さ、早く行くのです!」


どこに行くんだ…?わからん…だが、ともかく早くこの世界に慣れなければ…

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