第34話「そろそろ疑惑には決着をつけるべきだろう」
学校へ向かう俺はあることを考えていた。それは湊土のことだ。
湊土のスマホの壁紙が俺になっていて、更にハートマークの加工までしているのはハッキリとは言えないが、そういうことなのだろう。最近は同好会にやたらと金魚鉢がやって来て俺にちょっかいを出すのだが、それに湊土はいちいち反応して食って掛かるのが見ていられない。露骨すぎて……もう隠す気ないのかと。
思い返せば湊土には度々おかしなところがあった。湊土が階段から落ちそうになって助けた後、あいつ顔を真っ赤にさせていたし。俺が湊土は火野のことが好きだと勘違いした台詞も、俺に向けてのものだったのかもしれない。妙になよなよしているところも、いま思えばそういう気がある証拠……。
一人で考えていても疑惑は疑惑のままだ。火野には余計なことをするなと言ったが俺もそろそろ限界だ、こうなれば直接確かめる必要がある。
朝のホームルーム終わり。湊土がいつものように俺の席にやって来たので俺は行動に出た。
「湊土。ちょっとスマホ貸してくれないか?」
「えっ、な、なんで?」
「いや……俺スマホ持ってないから」
「や、やだよ。ハル悪戯(いたずら)するつもりでしょっ⁉」
頼む湊土。俺にスマホをさっと貸してくれ。そして俺の写真を壁紙にしているのを冗談っぽく笑い合おうぜっ!
「ちょっと計算したいから、計算機能を使うだけだからっ!」
「なんか嘘っぽいよっ。そ、そんな強引に言うなんて後ろめたいことがあるんでしょ⁉」
確かにそうだが、それをお前が言うか?
「頼む、どうしてもいま必要なんだよっ」
「や、やめなさいよ、湊土くん困ってるじゃない。そんなに計算したいならわたしの貸してあげるから」
隣でやり取りを見ていた火野が俺にスマホを差し出す。火野も湊土の疑惑は知っている。恐らく俺がそれを忘れているのだと勘違いしているのだろう。
「女は黙ってろよぉっ‼ 俺は湊土のスマホがいいんだよぉっ‼」
思わず怒鳴ってしまい教室がシーンと静まりかえる。
「ど、怒鳴らなくたっていいじゃん、もうどうなっても知らないからっ。マジ最っ低ー!」
流石にその気遣いに対して悪かったかなとも思ったが、相手は火野だ。一歩、歩けば忘れてしまうだろうから気にすることはない。
「そ、そんなに僕のがいいの……?」
湊土を見ると、湊土はなにやら体をモジモジとさせていた。
その言い方やめろっ。頬を染めるなっ。上目遣いになるなっ!
「……いや、また後でいいや……すまん」
限りなく黒に近い黒。いや、もうそれはただの黒だ。湊土は真っ黒だ。
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