第810話 お父さんを助けて
夏に、ある山へ登山しにいったときの話だ
登山はじめは天候に恵まれていたが、森に入ると急に風が強く吹いてきた
急にあたりに霧が立ち込め、道が分からなくなったら嫌だなと思っていた時
いつの間にか、近くに小学生の低学年くらいの男の子が立っていた
初心者向けのコースの為、家族連れも多くいたため、小学生自体は珍しくないが、一人と言うのはおかしい
案の定
「お父さんを助けて」
と助けを求めてきた
「どうしたんだい? 迷ったのかな?」
「こっち」
男の子は、理由も告げずに走り出した
霧もあって視界が悪いため、見失わないようについて行くのでやっとだった
「おーい、急ぐな。足元にも気を付けて――」
「早く」
男の子は、こっちの言う事を聞かずにそのままの速度で走っていった
小学生にしては体力がありすぎるぞと、息が切れてきたとき、男の子はとまった
「あっち」
男の子が指さした先に、一人の男性が倒れていた
慌ててその男性の元へ向かい、声をかける
「大丈夫ですか!?」
体に触れると暖かかったため、死んではいない様だ。ただ、足が少し変に曲がっているので折れているのかもしれない
「うぅ……」
何度か声をかけると、男性は目を覚ました
「痛っ、足が……」
「すぐに救助を呼びます」
すぐに警察へ電話し、救助を求める
しばらくすると、霧も晴れてきて辺りを確認したが、見た事の無い場所だった
何度も来ていたので、少し戻れば知っている場所へ戻れた
自分の居場所が分かったので、改めて警察へ電話し、助けに来た救急隊員を男性の元へ案内する
「本当に助かりました。霧で足を滑らせて斜面を落ち、あのままだと死んでいたかもしれません」
「お礼は……そうだ、貴方の息子さんは?」
今更ながら、ここへ案内してくれた男の子がどこへ行ったのかと見回す
「え? 僕は独身で、子供なんていませんが……」
「小学生くらいの男の子が、ここへ案内してくれたんですけど」
「そうなんですか? 僕は、見ていませんが……」
まさか、男の子が指していたのはこの男性では無かったのか? そう思い、もう一度男の子が指さした先を歩いてみる
しばらく進むと、沢があった。そして、そこには男性と子供が倒れていた
しかし、その姿はどう見ても白骨に近かった
警察により、行方不明になっていた親子だと判明した
あの男の子は、自分たちを見つけてほしかったのか、それとも怪我をした男性を助けたかったのか
どちらなのかは分からなかった
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