第811話 自動販売機
友人2人と肝試しに行こうと、廃ホテルへ車で向かっていた時の事だ
通った事の無い道だが、カーナビがあるので迷うことなく着くことが出来ると思われた
カーブを曲がった時、何かが立っている様に見えた
一瞬、お化けが出たのかと3人とも息を飲んだが、ライトに照らされて見えたのは
「古い自販機……か?」
俺は車のスピードを緩めて、ゆっくりと自販機を見ながら通り過ぎる
「なあ、ついでだから飲み物を買おうぜ」
「古い自販機っぽいし、くさってるんじゃね?」
「とりあえず、見てみれば分かるじゃん」
車を道の脇に停め、3人とも車を降りる
3人ともまじまじと自販機をいろいろな角度から見る
地面に電源があるのか、電源コードは地面の中に埋まっていた
そして電気が通っているようで、普通に買えそうだ
1本100円だが、ラインナップが昭和の飲み物ばかりで、ある意味珍しい
「100円ならとりあえず1本買ってみるか?」
「まあ、100円ならそんな惜しくもないしな」
友人は、とりあえず100円のコーヒーを買う。普通に出てきた
「賞味期限は……あれ? どこにもないぞ」
「印字ミスか?」
友人は、恐る恐る口をつける
「……普通のコーヒーだな」
「なんだ、本当にただの自販機か」
「それ以外、何があるんだよ」
俺はそう言ったが、実は車を降りた時からずっと誰かに見られている様な気がしてならなかった
結局、その1本のコーヒーを買っただけで車へ戻る
「あとどれくらいで着くんだ?」
「20分くらいかな」
俺は友人の質問に、カーナビの到着予定時間を見て答える
「なあ、また自販機があるぞ」
もう一人の友人が、外を見て指さす。そこには、確かに自販機があった
「もう飲み物は要らないだろ?」
「ああ、だけどあれも古そうな自販機だな」
今度は降りて確かめる事も無く通り過ぎる。しかし、それから5分ほど経った時
「また、自販機が」
「一体、この道でどれだけの人が買うんだ?」
どう見ても車通りが無く、細い道で歩いて通る場所でもないこんな場所に、なぜたくさんの自販機が置いてあるのだろうか
「……なあ、思ったんだけど、あの自販機、最初にコーヒーを買ったやつじゃね?」
「それは無いだろ、カーナビでも目的地に近づいているから、道に迷ったりはしてないぞ」
「じゃあ、もし次に見かけたら降りて確かめてみようぜ」
それからまた5分経った頃、また自販機があった
「じゃあ、確かめてみようぜ」
「いや、もう確かめなくていいから帰ろうぜ」
「肝試し前にビビりすぎだろ。じゃあ、俺らで見てくるわ」
俺は車に残り、友人2人が降りて自販機を確認しに行く。そして、慌てて戻ってきた
「あれ、やっぱり俺がコーヒーを買った自販機だった。なんか変だ、早く車を出してくれ」
「あ、ああ。分かった」
車を出してしばらくすると、カーブにさしかかった。そこにはまた自販機が
「おかしい、おかしいって」
「もう、戻ろうぜ」
友人たちもさすがにおかしいと思ったのか、顔を青くして帰ろうと連呼する
車をUターンさせ、来た道を戻る
すると、さっきあったはずの自販機が今度は見当たらない
だが、友人2人はもう何も言わなかった
それから、何も無く友人宅へ着いた
「じゃあ、またな」
「おう」
そして、次の友人宅へ
「おやすみ」
「ああ、お休み」
俺は自分の家に向かって車を走らせる
バックミラーを確認した時、俺は思わず叫びそうになった
いつの間にか、友人宅の前に、あの自販機が立っていたからだ
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