第753話 耳から

人気のない飯屋で、のんびりと食事をしようと思っていた


古い飯屋があったので、そこへ入る。中はお昼時だというのに、3人くらいしかいない


席は沢山空いているので、ここならのんびり食えそうだ


しかし、太ったおっさんが難癖をつけてきた。特に目があったとか、肩がぶつかったという事は無い


「〇×▽! 〇×▽! 〇×▽!」 


〇×▽は何を言っているのか分からない。怒っているように見えるから、悪口か罵倒だと思うが


無視して注文しようと思ったが、食券機みたいなものは無かった


メニューっぽいものはあるが、何語で書かれているのか分からないので読めない。もしかして、ある国の人専用のお店だったのだろうか?


すると、おっさんがしつこく怒鳴ってくる


「何言ってるか分かんねーよ」


どうせ言葉は通じないだろうと思っていた


「出てけ! 出てけ!」


しかし、意外にも今度は日本語で話した。もしかして、さっきもどこかの国の言葉で同じことを言っていたのか? だが、俺には出ていく理由がない


「お前が出て行けよ」


俺は何故か強気で、おっさんの肩をドンと叩いた


すると、見た目よりもおっさんは軽く、よろけて地面に尻もちをついた。糸が切れたように座り込む


だが、それだけじゃなかった。尻もちをついた拍子に、耳から変な物が出てきた


小さな玉ねぎの様なものが、なんかねっちょりとした粘液と共に出てきた


それは玉ねぎじゃ無かった。いや、玉ねぎに見えるのは本当だが、それに小さな手足が生えていたのだ


そいつは、あわてて耳の中に戻ると、おっさんは立ち上がり、俺を無理やり店の外へと押し出してきた


俺はあっけにとられて、抵抗らしい抵抗をすることなく店の外へと追い出された


後日、その場所にはもう食堂は無かった。俺は、あいつは宇宙人だと思っている

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