第752話 出られない
夜中に、事務所へ電話が入った
それは、業務用エレベーターからだった。この時間帯はすでに業務が終わっているため、利用するはずのない時間帯だった。しかし、これはエレベーターの中からしか連絡できないため、誰かがエレベーター内に居る事は確実なため、出ざるを得なかった
「もしもし、どうしましたか?」
電話に出ると同時に、防犯カメラを確認する。すると、女性が一人映っていた。この会社の社員かどうかは分からない。何か理由があってエレベーターを利用したのだろうか?
女性は、電話に応答せずに1階のボタンを連打していた。映っている映像から、女性が居る階は4階だと分かる。この会社は地上5階建てのため、4階にあるオフィスから降りたかったのだろう
女性は応答しなかったが、扉がしまりエレベーターが動き出した。女性はまだ1階のボタンを連打している
「もしもーし」
一応声をかけるが、聞こえていないのか受話器をはずしたまま取らない。まあ、何事も無ければこのまま1階について、女性が降りて終了だろう。受話器を元に戻すという業務は残るが
すると、誰もボタンを押していないのに、2階でエレベーターの扉が開いた。故障だろうか? だけど、そこで女性が降りれば問題ないはずだ
しかし、女性は必死に今度は閉まるボタンを連打する。誰も乗ってくる様子は無いし、女性も降りないのだろうか?
普通に扉が閉まり、再びエレベーターは降下する。女性は1階ボタンをまだ連打している
「あれ? おかしいな」
とっくに1階についていい時間なのに、エレベーターはまだ動き続けている。女性は、今度は開くボタンを連打するが、エレベーターは変わらず下降し続けていた
「おかしいぞ、やっぱり故障か」
そう思っていたら、扉が開いた。だが、おかしなことに扉の向こうは真っ暗で、1階の床すら見えない。女性は何故か開くを連打している
「タスケテ、タスケテ、タスケテ、タスケテ……」
電話ごしに、女性の声が聞こえる。それから1分ほどして、エレベーターの扉が閉まった
それと同時に、女性はピタリを動きを止めた
そして、急にカメラを凝視し
「出られない! 出られない! 出られない!」
と叫び、最後にはカメラに飛びついてきた。女性がぶら下がったのか、壊れて映像が映らなくなった
これ、確認しに行かないとダメかな?
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