第672話 崖

この人生が嫌になった


来世は……もしくは異世界転生なんかあれば……


そんな益体もないことを考えながら、自殺の名所と呼ばれる場所の近くに来た


その崖から飛び降りて、生きて帰ってきたものは居ないと言われている


まあ、仮に生きていたとしても自殺できなかったと言うわけないか


「はぁ……」


そんな崖を横から見つめていた。崖の近くに来たっていうのにまだ死ぬ決心がつかない


「あそこはやめた方がいいよ」


そんな俺に話しかけてくる奴がいた。振り向くと、ごく普通にみえる青年が立っていた


「なぜだ?」


「あそこを見てごらん。崖の下。ほら、少しだけ出っ張っているだろ? 飛び降りた奴は海風に流されて大体あそこの出っ張りに体を打ち付けてから海に落ちる。まあ、痛みで呼吸なんてできないだろうね、泳ぐこともまず無理だ。下手をしたら、そこにぶつかった時点で死んでるかもね、まあそっちのほうがマシかもしれないけど」


そう言われれば、そんなでっぱりが見える。だが、なぜこいつはそんなことを知っているんだ?


「なんでわかる? って顔をしているね。僕も自殺したくて、確実に死ねる方法が無いかとここに来たんだ。それで、本当に絶対に死ねるのかずっと見てるんだ。ここも、それでも、100%死ぬわけじゃないようだし……ああ、君が飛び降りるのなら100%死ねるから安心して」


そう言った青年の顔は、やけにうれしそうな顔をしていた

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