第662話 ハズレ
高速道路の下のトンネル、こんな何の変哲も無い場所での出来事だった
その高速道路の下のトンネル――長いのでトンネルとだけ呼ぶ――は3つに分かれていた
左右の人が通る場所と車の通る場所だ
夜、友人2人と帰り道に通りかかったときに友人1が言った
「なあ、3か所あるから別々に通ってみねぇ?」
そこに意味なんて無かったのだろう。3人いて、3か所通り道がある、だから別々に通ってみたくなった、ただそれだけだったんだと思う
程よく酔っていた俺と友人2も、特に反対することなく別れて通ることにした
ちなみに、今は一番左側の歩道にいる
「じゃあ、じゃんけんで負けた奴が向こうの歩道行きな」
じゃんけんの結果、俺が一番左、友人1が真ん中、友人2が右側を通ることになった
「じゃ、また向こうでな」
と言っても、1分もかからず通り抜けられるくらい短いのだが
スタートは一緒になってトンネルへ入る
「落書きすらない綺麗なトンネルだな」
今まで気にしたことも無かったが、こういうところにはスプレーの落書きがあるもんだと思っていた。そして、あっさりと通り抜ける
「よぉ、久しぶりだな」
案の定、すぐに友人1が話しかけてきた。そして、友人2ももう来るだろうと思ったが、なかなか出てこない
「中で小でもしてんじゃね」
酒が入ったせいか、トイレも近くなっているのは確かだった。そう言われると、俺もしたくなったのでさっさとコンビニにでも行きたい
「じゃあ、覗いてみるか」
車通りもほとんどなく、道路を渡って向こう側のトンネルに行く。そして、中を覗き込んだ
「あれ? 居ないぞ?」
確かにみんな一緒に入ったのは見ていたのに
「俺たちを驚かすために、一旦戻ってみたのか?」
どうせすぐバレルのにと言いつつ、トンネルをもう一度くぐる
「あれ? いねぇ。どこいった?」
しかし、そこにも友人2は居なかった。付近を捜したが居ない。電話をかけても電源が切れていると言われた。そうこうしているうちに俺の膀胱も限界が近くなってきた
「まあ、迷うような場所じゃないし、逆にダッシュしてトンネル抜けて行ったのかもしれないし」
「それもそうか」
いい塩梅に酔っていたのもあって、俺たちはコンビニに寄った後に帰った
次の日、友人2から変な話を聞かされた。友人1が昨日帰っていないというのだ。トンネルを抜けた後、俺と一緒に友人1を探したけど見つからなかったよなと
酔っていて俺が記憶違いをしていたのか? 確かに友人1と友人2を探したと思ったんだが
しかし、友人1に電話をすると昨日友人2と一緒に俺を探したって言う。そして、コンビニ前でそのまま酔って寝ていたので今帰ったところだと言っていた
一体、だれの記憶が正解なのだろうか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます