第661話 山菜取り
これは、山で山菜を探していた時の事です
ここは滅多に人が来ない場所で、山菜が取り放題の私の秘密の場所です
人に教えるとあっさりと無くなってしまうので、山菜好きの人は少なからず自分の採取スポットを持っているものです
この場所を知っているのは私と、よく一緒に来た元夫です
夫とは山菜取りで知り合ったのですが、数か月前に浮気が発覚し、子供も居なかったのであっさりと離婚になりました
「っと、ぼーっとしてる場合じゃないわね」
そんな事を考えていて手が止まっていた私。誰も知らない場所という事は、何かあっても誰も助けに来てくれない場所でもあるという事で、少なからず周りに注意しなければなりません
山菜が取れる場所は、滑りやすい場所も多いのです。気が付くと、いつもの場所よりも少し奥まで入り込んでしまっていました
「っ、きゃあ!」
そして、注意していたつもりでしたが、ぬかるみにはまって尻もちをついてしまいました
「たはは」
誰かに見られているわけでもないですが、かっこう悪い姿になったのでごまかし笑いをします
「きゃあ!」
今度は別の意味で叫ぶ。ぬかるみから人の手のようなものが出ていたからだ。私が足をつっこんだので、代わりに地面の中から飛び出たようです
手は、半分白骨化していたけれど、その細い指からは女性のものと思われました
私は電話より先に、交番まで行くべきだと感じました。なぜなら、電話でこの場所を伝えるには目印になるようなものも無く、伝えきれないと思ったからです
「どうしたんだ?」
山から出ると、珍しくちょうど山の中へと入ろうとする人が居ました
「あなた……」
それは別れた元夫でした。この場所は元夫も知っているからたまたま会ったとしても不思議ではない。それに、今の状況ならちょうどいいと思いました
「この山の中で……」
私は元夫に人の骨のようなものがあったと伝えました。元夫は、山芋でも掘りに来たのか、スコップを持ってきていました
本当ならすぐにでも警察に行くべきなのでしょうが、一人で行くのはやはり心細く感じました
「わかった。案内してくれ」
元夫から2人で確認した方が説明がしやすいし、もしかしたら動物の骨かもしれないと言われ、案内する事になりました
私はさっきの場所へと元夫を案内しました
「これで運ぶ手間が省けたよ」
振り向くと、スコップを振り上げる元夫が――
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