第660話 未来からの通信

「あ~あ~あ~」


私は声優志望の女子高生。自分の声質を確かめようと、ボイスレコーダーとにらめっこしている


「よしよし、今度はもう少し高くしてやってみようっと。私は魔女っ娘戦士、アテナよ!」


後半部分だけ録音し、再生する


「私は魔女っ娘戦士、アテナよ!」


「うん、いい感じ!」


私は自分の声に満足する。よし、もう一回聞いてみようっと。私は再生ボタンを押した


「ねえ、聞こえる?」


「え?」


「あ、よかった、聞こえるわね」


それは紛れもなく私の声だった。何回も自分の声を聴いているので間違いない。でも、どういう事? こんな声録音していないのに


「私は未来のあなたよ。未来からの忠告、絶対に声優を目指さないで。後悔するから」


「どうしてそんな事言うのよ! それに、未来の事なんて分からないんだから!」


「証拠ならあるよ。その日、〇〇駅で指名手配犯が逮捕されるから。信じたらそうね……この電話番号に連絡して」


そう言って切れた。そして、夕方のニュースで本当に〇〇駅で指名手配犯が逮捕されたのだった。私は、夜に電話をかけてみる


「もしもし……? 本当にニュースになったわ」


「信じてもらえたようね。それじゃあ、私からの忠告も聞いてくれるってことでいい?」


「それはまた別よ。私の子供のころからの夢なんだから」


「知ってるわよ。だからこそ、目指さないでほしいのよ」


「理由を言って」


「私は声優になったわ。結構人気の作品にも出た」


「それならどうして!」


「最後まで聞いて。私にマネージャーがついたの。それは中学の時に好きだった男の子だった。だけど、私に人気が出たために、彼氏と勘違いしたストーカーが刺したのよ」


「そんな……」


その男の子は小学校の時から好きだったけれど、最後まで告白できずにそのまま高校になって疎遠になってしまった男の子だった。私が声優を目指したのもその子が私の声が好きと言ってくれたからだ


「……分かったわ。命には代えられないものね……」


私は、声優を諦めた。そしてコールセンターで働くことにした。面接でも聞き取りやすくていい声だと褒められた


ある日、いつも通り電話をとっていると……


「私は未来のあなたよ。今すぐその仕事を退職しなさい。じゃないと……」

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