第657話 熱中症
最近暑い日が続く
俺は人材派遣会社に勤めていて、今日は派遣先で倉庫の整理を行う予定だ
仕事場に着き、今日の仕事を社員から指示される
「くそあっちぃ」
倉庫と言うからもっと涼しいところを想像していたのだが、そこは2階にある倉庫だったので普通より暑い。さらに、倉庫というよりはただの物置だ
俺のほかに2人ほど雇われていたらしい。しばらく使っていなかったこの場所を、新しい部署の書類室に作り替えるらしい。その工事が数日後にせまっているのにまだ片付かないから慌てて派遣に依頼したようだ
ただの物置にクーラーなんて無い。一応、10時と3時の休憩はとってもいいと言われたが、休んでいる間も体力が減りそうなくらい暑い
俺は一応真面目に片づけていたが、あまりの暑さにボーっとしてきた
「あれ?」
気が付くと、辺りは暗く誰も居ない。まさか、いつの間にか今日の勤務時間が終わったというのだろうか。腕時計を見たけれど、なぜか針が高速でグルグルと回っていて時間が分からない
「おーい!」
呼びかけるが誰も居ない。とりあえずここを出ようと扉に手をかけるが、鍵が閉まっていた
「まだ俺が残っている! あけてくれ!」
しばらく耳を澄ませていたが、何の音もしなかった。このままじゃ、脱水症状で死ぬかもしれない。そんな命の危機を感じて扉をドンドンと叩く
すると、扉が開いた。さっきまで鍵がかかっていたはずなのに
扉の向こうは冷蔵庫のように涼しかった。むしろ、寒いくらいだ
会社の中は誰も居ない。しかし、ある部屋で人の気配を感じたのでその部屋に入ってみる
「うわっ!」
その部屋の中に人がぎっしりと20人くらいいた
「と思ったら、なんだよマネキンか」
全く動かないので不思議に思っていたが、人形なら仕方がない。他の部屋に行こうと思ったら、マネキンが出口を塞いだ
「な、なんで」
マネキンはだんだんと俺に近づいてきて……
「おい、大丈夫か」
気が付くと、俺は倒れていたようだ。軽い熱中症だと思うから休んでいろと言われた
少しでも涼しい場所に行こうと倉庫を出たが、さっきの夢と同じ通路が続いていることに気が付いた
そして、さっきぎっしりとマネキンが居た部屋の前に立ち、耳を澄ます
しかし、そこは普通のオフィスのようでガヤガヤと人が仕事をしている音がした
「ふぅ」
やっぱり夢だったかと、再び涼しそうな場所へ向かおうとしたとき、その部屋のドアが開いた
「おつかれさ…ま……」
その人物の顔がマネキンのようにのっぺらぼうだった
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