第648話 着メロ


俺は誰から電話がかかってきたかすぐにわかるように着メロを設定している


友達、彼女、親、はては先輩や後輩と数十曲設定してある


「よく覚えてられるな」


「まあな」


とは言ったものの、本当は覚えているのはよく連絡する人だけで、たまにしか連絡しない人の音楽は分からず画面を確認してたりするのは内緒だ


ある日、音楽が流れた。聴いたことはあるが、誰だったか思い出せない。知り合い以外の着メロは一律「運命」にしてあるので、これは知人からだと分かる


「は? 非通知?」


非通知なのに着メロが流れるとはどういうことだ? しかし、音楽は運命じゃないし、もしかしたら先輩とかだったら困るのでとりあえず出る


「もしもし?」


名前を言わず、相手の出方をみる。しかし、ザーッという雑音しか流れない。いや、雑音が流れるのもおかしいのだが


「もしもし? 誰ですか?」


もしかして、たまたま触れて勝手にかかったのだろうか。それなら、一回切ってもいいかなと思って耳を放そうとしたとき


「お前もこっちへ来い」


そう言って切れた。こっちってどこだよ、非通知だから掛けなおせないし……と思った瞬間、誰の声だったか思い出した


「なんで……」


それは数年前に交通事故で亡くなったはずの知り合いだった。一度、バイクで一緒にツーリングした程度の付き合いだ


それ以来、非通知の電話に出ることはなくなった。今のところ俺が事故に遭うという事もない

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