第643話 いないはずの

これは、20年以上も昔の話です


当時、私には京子、茜という小学校からの同級生がいた


私と京子は同じ高校へ行き、茜は家庭の事情で県外へと引っ越していた


偶然、私と京子は大学も同じだったため、夏休みも同じ時期だ。それを利用して、旅行へ行くことにした


ふと、茜の事を思い出し、久しぶりに連絡するとちょうど同じ時期に夏休みだという事だった


「それなら、一緒に楽しもうよ!」


急遽3人での旅行となった。3人で久しぶりに遊び楽しかった。写真も各所で撮り、また来年遊ぼうと約束し別れた


しかし、旅行の写真を現像してみると


「……綺麗に写ってない。これも、それも、どれも!」


当時は今みたいにデジタルではなくフィルムで、現像しないとどう写っているのか分からなかった


その写真が、どれも歪んで写っていたり、そもそも一緒に撮ったはずの写真にまったく写っていなかったりした


それでも、何枚かはちゃんと写っていた


「……茜が……」


京子がぽつりと言った言葉。それは、茜が写っている写真が無いという事だった。よくよく見ると、私と京子だけが写った写真はちゃんと写っていて、茜だけもしくは茜が含まれているものだけが歪んだり写っていなかったりしたのだ


これはおかしいと思い、茜に電話する


「--この電話は、現在使われておりません……って! 昨日までちゃんとかかったのに!」


後日、もう一度写真を確認したとき、ある写真に私たちが中学の頃、一緒に買った人形だけが写っていた

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