第640話 鍵が無い1

これは、部活が終わって帰ろうとしていた時の事です


体育館で着替えた後、ポケットに入っているはずの家の鍵が無い事に気が付きました


「ごめん、ちょっと探すから先帰ってて」


友達は手伝うと言ってくれたけれど、今日の部活は遅くなったため、悪いと思って断りました


しかし、今思えば手伝ってもらっていたら、この後の結果が変わっていたかもしれません


私が行き来したのは、教室と体育館だけなので体育館に無ければ教室だろうと思い、教室へ向かいました


すでに18時を過ぎ、太陽が落ちて暗くなり始めていました


「ここにあればいいんだけど……」


私は、教室のドアを開けました。すると、教室の中心に男性か女性か分からない、後ろを向いたままで、医者や科学者が着るような白い服の人影がありました


「だ、だれ!」


私は不審者だと思って大声を上げました。すると、その人影は私の机を指さしました


そして、私がその指の先――自分の机をちょっと見た瞬間、すでに消えていました


私は急いで自分の机へ向かいました。すると、私の机の上に鍵が置いてありました


「一体だれが――ひっ!」


私が鍵へと手を伸ばした瞬間、その手を横から掴まれました。見ると、さっきの人影でした。間地かで見たその人影は、長い髪を前に垂らした男性でした


「ち、ちが……う」


よく見ると、それは前髪ではなく、頭皮の様でした。私は思いきり手を振り払い、鍵も取らずに走りました


後ろを振り向くとすぐ後ろにいそうで、振り向くこともできずに玄関へと向かいます


3階の教室から玄関まで、全くの無人で、いつもなら誰かが最後まで残っているはずの職員室すら真っ暗でした


「だ、誰か!」


私は玄関から外へ出ようと、うち履きのまま飛び出しました。しかし、扉の前にはなぜかさっきの白い服の男性が立っていました


そして、私の上着のポケットを指さしたのです。私はとっさに自分の上着のポケットを押さえると、何かの感触があります


「な、なんで……」


ポケットには、さっき教室に置いてきたままの鍵が入っていました。取り出して手に持ってみると、私の家の鍵ではなく、さびた古い鍵でした


それを見た白い服の男性は、今度は理科室の方を指さしました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る