第638話 卒業旅行

卒業旅行に県外へ行ったときの話です


私の学校は、3月1日に卒業式があり、卒業後の就職先への勤務は4月1日からです


その間の1か月は春休みという事で、サークルの仲間で旅行へ行くことにしました


サークルのメンバーは4人で、男性2人女性2人でした


しかし、男性の1人が就職先が地元という事で、早めに帰るため行けないという事でした


女性2名、男性1名なら変な事にはならないだろうと思い、旅行は決行されました


当日、駅で待ち合わせをしていたのですが、私の携帯に連絡が入りました


「ごめん、急な体調不良で行けそうにない」


それは、電車のチケットを取った友達からの連絡でした。チケットが無ければ旅行へ行けません。私はどうしようかと慌てましたが、すぐに追記の連絡が入りました


「チケット、私の友達に渡すから」


それでほっとしました。けれども、これでは私と男性の旅行になってしまうのではないかと心配になりました。嫌いではないけれど、どちらかと言えば苦手なタイプで、私は友達と一緒に行けるから我慢するつもりだったのです


男性も駅に着き、仕方なく理由を話しました


「まあ、俺らだけでも楽しんでこようや」


男性の私を見る目に、嫌な感じがしました。しかし、数万円払ったチケットは無駄にできません


もやもやとした気持ちで待っていると、知らない女性が私に話しかけてきました。その女性が、友人の友達だったのです


「じゃあ、改札へ行こうか」


「え? どういう事?」


聞くと、チケットが無駄になるくらいならと、友人が一緒に行くように勧めてくれたらしいのです


私も、男性と2人きりの旅行よりはマシだろうと、了承しました


その女性は綺麗だったので、男性の目が私からその女性に移ったのは腹が立ちましたが


その女性は話し上手で、男性も私も楽しく旅行する事が出来ました。夜のビジネスホテルも2部屋で、女性2人と男性1人で別れました。男性は、一緒に飲もうとしつこかったのですが、私が断固拒否したのであきらめたようです


あっという間に、旅行が終わってしまいました。駅で別れ、その足で友人の家に向かいました


「おかげで、すっごく楽しい旅行になったよ」


「え? あいつと2人だったのに?」


「え?」


聞くと、友達は友人にチケットを渡したけれど、一緒に行ってきてとは伝えていなく、さらにいうならばチケットは2人分だけで、自分の分はキャンセルをして、満額ではないけれど払い戻しできていたということでした


私は、旅行の証拠として携帯で撮った写真を見せようとしましたが、撮ったはずの写真が1枚もありません


「そんな! 嘘!」


私は男性にも確認の電話をしましたが、その男性もなぜか「よく覚えてない」というのです


行ったばかりの旅行に、そんな話があるでしょうか。そういう私も、その女性とどんな話をしたのか全く記憶にありません


私は、一体だれと旅行へ行ってきたのでしょうか


しかし、意外なところで分かりました。たまたま新聞が目に入り、そこの記事に書かれていました


私たちが旅行へ行った先へ行く予定だった女性が、事故で亡くなっていたのです。その女性は、とてもきれいで、活発な性格だったようです

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