第631話 口を隠す

街コンをすることになった


参加者は市に申込書を提出する。市が管理するだけあって身分証は完璧だろう。つまり、既婚者や歳のごまかしなどは無いという事だ


そこで、雰囲気の良い店で数名の女性と会話をしていた。ここには、ちょっとしたオードブルと、一応簡易版のバーがあり、食べ物も酒もあるという事で、俺は酒の力を借りて会話していた


そのうちの一人に、僕の好みドストライクの目元をした女性がいた


今はウィルスが蔓延していて、みんなマスクをしている。だから、その女性の目元しか見えないのだが……


「どうして食事をしないんですか?」


その女性は食べるどころか、飲み物すら飲んでいないようで、目の前に置いてある食べ物も飲み物も全く減っていない


「今はちょっと、ね」


そう言って苦笑気味に閉じた目を見て惚れてしまった


会話自体も楽しく、彼女が食事を口にしないこと以外は特におかしなところはなかった


昼食後は、気の合った人と次の場所へ向かう事になる。ここで今いる人に合う人が居なければ離脱し、他で行われている街コンの人と合流できるシステムだ


俺は彼女の事が気に入ったので、一緒に行かないかと誘う


「あなたが良ければ、ね」


そう言って彼女は僕と次の会場へ向かった


そうしているうちに夕方になり、この後は本当に気の合った2人はそのまま夜の街へと繰り出せるのだ


酒が入っていて気が大きくなった僕は、ホテルへと彼女を誘った。彼女は少し困った顔をしたけれど、OKしてくれた


「ずっと隠すわけにも行かないし、ね」


それがどういう意味かは分からないけれど、ホテルに着いた


「驚かないで、っていうのは無理かもしれないけど、できれば嫌わないでほしいか、な」


そう言って隣に座った彼女は、ゆっくりとマスクを外した


「そ、それは……」


マスクを外すと、なんと彼女の口は逆さだったのだ


「それは生まれつきなの?」


そう問うと違うという


「小さいころに、ある神社でおふだを拾ったの。そして、私はそれをハサミで切って福笑いの顔のパーツを作ったの。実際、その福笑いのパーツを使って福笑いをして、気が付くとこうなっていたの、罰があたったのかしらね。今はみんなマスクをしているから、目立たなくて助かってるけどね」


そう言って悲しそうに彼女は笑った


僕は今も彼女と付き合っている。将来、結婚するつもりだ。なぜなら、僕にとって彼女ほどかわいい目元の女性を知らないからだ


彼女の罰がいつまでかは分からな

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