第630話 更衣室

私の高校の更衣室のセキュリティは万全だ


昔、女子更衣室に侵入し、盗みを働いた変質者がいたらしく、それに対応するためにロッカーすべてに鍵が取り付けられ、窓は開かなくなった


入り口は普通に開くが、入り口だけ開いても盗みは不可能だ。捕まる覚悟で覗きはできるけど、100%見つかるだろう


「でさー」


「えーうそー」


私たちの次の授業は体育だった。雑談しながら更衣室へ向かい、着替える。着替えは当然ロッカーに入れて鍵を閉める


「じゃあ、行こうか」


「うん」


全員、校庭へ向かう。今日はマラソンだ……つらい


「つかれたー……」


「だねー」


私たちは再びロッカー室へと入った


「あれ? こんなのあったっけ?」


誰かがそう言ったので、その方に顔を向けると、1体のうさぎの着ぐるみが置いてあった


「何かの劇か何かに使うのかな?」


誰が置いたか分からない着ぐるみ。不審に思いながらも、何人かは次の授業があるからと着替え始めた


私もさっさと着替えて教室に向かおうと、シャツに手をかける


そのとき、人形の頭が少し動いた気がした


「え?」


「どうしたの?」


「今、着ぐるみの頭が動かなかった?」


私がそう言った瞬間、着ぐるみは立ち上がり、慌てて扉へ向かった


「きゃああ!」


更衣室内はパニックになった。何人かは逃げ出そうと下着のまま更衣室から出るありさまだった


当然、騒ぎを聞きつけた先生や生徒たちによって着ぐるみは捕まった


着ぐるみは女子トイレに入っていっていたらしい


「で、犯人は誰? 前に捕まった下着泥?」


「それが……」


着ぐるみの中身はもぬけの殻だったらしい。もしかしたら、女子トイレの窓から逃げたのかもしれないという話だった


男が入りにくい女子トイレに逃げ込むことによって逃げる時間を稼いだようだ


当然、追跡するために何人かの先生はトイレの外を捜索していた


しかし、犯人は見つからなかった


警察が到着する頃。うさぎの着ぐるみも忽然と消えていた

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