第623話 ただの道で

お通夜の帰り道だった




上司の母親が亡くなられたという事で、職場を代表してお通夜に行ってきたのだ




人数分の香典返しを持ち、くらい夜道を歩く。俺が代表して行ったのは、単に家がこの近くだったからだ。別に上司と一番親しいとか、上司の次に偉いというわけではない




「ったく、なんで残業もあたらないのにこんなこと……」




むしろ、こういうことは面倒だと思う性格だったが、先輩に「家が近いからお前が行けよ」と言われて断る度胸もなかった




それなりに思い香典返しを肩に担ぐ。ほかに歩いて帰る人は居なく、俺だけがとぼとぼと歩いていた




すると、前に人が居たのか、だんだんと近づいて行った。それは確かに人の後ろ姿だったが、身長が低い




見た感じ、小学生の男女だろうか




(こんな時間に小学生が二人であるいてるなんてな)




別に治安が悪いところでもなかったし、深夜というほどの時間でもないので、気にせずそのまま追い越そうと数メートルに近づいた時




急に男の子の方の首が180度後ろを向いた




「うわああ!」




その表情はすごくうれしそうな笑顔で、俺は気持ち悪くてすぐに来た道を戻る




「あはははは」




男の子は、顔はこちらに向いているが後ろ歩き状態でこっちに走り出した




俺は香典返しを捨て、全力で走った。怖くて後ろを振り向けなかった




気が付くと、さっきのセレモニーホールに戻ってきていた。見送りを追え、ちょうど中に戻ろうとしていた上司と目が合った




「なんだ、まだ居たのか。どうした? そんなに青い顔をして息を切らせて」




中へ入り、上司にさっきの出来事を話す




「そんな死亡事故があったとは聞いたことが無いが……そんなに怖いなら、一緒に泊まるか?」




俺は一人で帰るなんて絶対できそうもなかったので、その言葉に甘えることにした。上司の親せきなども居るので、それなりに人の気配があって落ちついた




何気なく外を見ると、女の子が立っていた。さっきのやつか?




俺はびくびくとしながらも、目を離せずにいた




その瞬間、ぽとり と女の子の首が地面に落ちた




俺の気も遠くなっていくのが分かった


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