第620話 赤信号

これは、初めて長距離運転をしたときの事です


知らない場所の交通状況は、まったくと言っていいほど分かりません


そのときは、特に仕事で急いでいたとか、慌てていたという事はありませんでした


ただ、慣れない道での運転疲れと、赤信号にやけにひっかかったことでイライラしていたのかもしれません


夕方、暗くなってきたので対向車のライトがまばらについていました


さて、自分もライトをつけようかと一瞬目を離しました


ライトをつけ、ふと信号を見ると黄色でした


「これならいけるか?」


何回も赤信号にひっかかり、今回はさっさと通ってしまおうとアクセルを踏みました


しかし、交差点に入る前に赤信号に変わってしまいました


「今更止まれるか!」


私はさらにアクセルを強く踏み込みました


すると、目の前にランドセルを背負った小学生が飛び出してきました


「危ない!」


私はハンドルをとっさに思いきり左へと切りました


スピードが出ていたため、止まれずにそのままガードレールへとぶつかってしまいました


大破とはなりませんでしたが、それでもバンパーは割れてはずれ、タイヤ部分も曲がってしまうほどの事故でした


エアバッグが開き、私はしばらく気絶していました


気絶から覚めると、私は車の外に出されていました


「こ、子供は!」


事故前の記憶がよみがえり、もしかして轢いてしまったのではと、焦りました


「子供? だーれもとおりゃしとらんよ」


事故を見ていたらしい、目撃者の男性が言うには、横断歩道の前で急に車が曲がってぶつかったらしい


「ただ、たまーにあるさね、ここでの自損事故は。みーんな子供を避けた言うちょるけど、本人以外は誰もみとりゃーせん」


昔、赤信号を無視した車が横断歩道を渡っていた小学生を轢いた……なんて事故も無いそうですが、無謀運転をする車の前に、たまに子供の幽霊が現れるそうです

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