第617話 卒業アルバム

部屋の片づけをしていたら、懐かしいものが出てきた




それは小学校の卒業アルバムだ




俺の卒業した小学校は、過疎化のあおりで閉校され今は誰も立ち入れないように鎖で校門も閉じられている




たまに肝試しに来た奴が入り込むが、防犯システムは生きているので不法侵入で捕まっているのも最近聞いた




それはともかく、懐かしくなってアルバムを開く




そうやって片づけが進まないのは俺の悪い癖だが、そう大して時間もかかるまいと誰にともなく言い訳する




「ああ、こんなこともあったな」




小学1年生の入学式の頃から、近くの場所へ旅行した事、いろいろと行事ごとに写真が並んでいる




もう、小学校を卒業してから20年は経つだろうか……




そう思いながらページをめくると、ふと違和感があることに気が付いた




「これ、誰だ?」




小学生に混じって20代くらいの青年が写っている。担任は女性だったので、先生という事は無いだろう




「隣のクラスの担任は男性だったっけ?」




いや、隣のクラスの担任も女性だったと思う




「じゃあ、誰だ?」




その青年は、無邪気な笑顔で写っているものが多い




そして、最後の集合写真




「これは……」




その青年は、小学生の列に堂々と写っていた。真正面から見たその真剣そうな顔は、小学校の頃に仲の良かった友達に似ている




卒業と同時に転勤のからみで離れ離れになった




それ以来連絡も取っていないからどうなったのか気になる




次の日、どうしても気になったので今でも地元に残っている同級生に聞いてみた




「ああ、あいつは数年前にバイク事故で亡くなったよ。俺はたまたま見た新聞で知ったんだけどな」




調べてみると、墓はここにあるらしい。俺はそいつの墓参り行くことにした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る